小鳥遊きの\DEADMAN
voice:小鳥遊きの\DEADMAN
さとうしお
voice:さとうしお
ふむ まじめ
voice:ふむ まじめ

お姉さんが安心できる空間を作ろうとする年下カフェ店員

(玄関の鍵を開ける)

どうぞ。

(玄関を閉め、鍵をかける)

申し訳ないんすけど、ここでちょっとだけ待っててもらってもいいっすか?
足の踏み場ないんで、歩ける程度に片付けてきます。

(彼女を残して部屋に上がる)

 (彼女:「気にしなくていいのに…」)

(部屋を片付けながら)気にしなくていいわけないじゃないっすか。
部屋に女性呼んだの、初めてなんすから…。

 (彼女:「そうなの?」)

そうっすよ。
母親すら入れたことないっす。

っ…!
いってぇ…。

 (彼女:「大丈夫!?」)

大丈夫っす。
テーブルの足に小指ぶつけただけなんで…。

これはこっちで…これは、この中に入れときゃいっか…。

(彼女の元に戻る)

すいません。
お待たせして…。

どうぞ。
上がってください。

 (彼女:「お邪魔します」)

パパッと片付けただけなんで、まだまだ散らかってますけど…。
適当に座っててください。

とりあえず、風呂入れてきますね。

 (彼女:「ありがと。シャワーだけで十分だよ?」)

ダメっすよ。
シャワーだけなんて…。

今日1日いろいろあってお姉さんが思ってる以上に体は疲れてるんすから、ちゃんと湯に()からないと、取れる疲れも取れないっすよ?

それに……指先、()れてもいいっすか?

 (彼女:「うん」)

(彼女の指先に触れる)

ほらね?
まだ冷たい。

肉体的にも精神的にも、怖くて、まだ緊張してる状態じゃないっすか。
これ(ほぐ)してやんないと、寝れないっすよ?

(彼女:「でも、君だって疲れてるんじゃ…」)

俺のことは、いいんすよ。
今はお姉さんが最優先っす。

(風呂場に行き、風呂の準備をする)

(彼女の元に戻る)

着替えとタオルは、コレ使ってください。
洗濯してるの、コレしかなくて…。
すいません…。

 (彼女:笑いを堪えている)

何、笑いを(こら)えてるんすか?

 (彼女:「さっきから謝ってばっかなんだもん」)

……ん?
…確かに、家帰ってきてから謝ってばっかかも…。

(溜息)はぁ…。
かっこつかねー…。

 (彼女:「そうなの?」)

だって、そうじゃないっすか。
「俺の家来ますか?」って言っておきながら、この失態の数々…。
かっこ悪いにもほどがありますって…。

……でも、やっと笑ってくれた…。
お姉さん、店に来た時からずっと顔引きつったまま、無理して笑ってる感じだったから…。

(安心させるように)大丈夫っすよ。
俺はお姉さんを傷つけたり、怖い思いさせたりしないっす。

(独り言っぽく)あっ…でも、この後風呂入るから、不安か…。

(ゴソゴソして紐を取り出す)

あのっ!
この紐で俺の手足縛ってください。

 (彼女:「えっ!?」)

お姉さんが風呂入ってるの(のぞ)いたりしないけど、彼氏でもない男がいる家で風呂に入るの不安だと思うし…。
手足縛っておけば、多少は安心じゃないかと…。

 (彼女:「しないよ。そんなこと」)

いいんすか?
縛んなくて…。

俺のこと、怖くないんすか?
ストーカー野郎と同じ男っすよ?

 (彼女:「いいの。君のこと、信じてるから」)

そうっすか…。
お姉さんが俺のこと信じてくれて、すっげー嬉しいっす。
その信頼を裏切るようなことは絶対にしないって誓います。

(風呂が沸く)

ちょうど風呂()いたし、入ってきてください。
シャワーだけで出てきたら、俺、怒りますからね?
最低でも30分は風呂に入ること。
いいっすね?
約束っすよ?

自分の家だと思って、時間は気にせず、ゆっくりしてきてくださいね。