(寝ている織姫の部屋に入ってくる彦星)
あっ…おはよ。
気分はどう?
そ。
悪くないならよかった。
急に倒れたからびっくりしたよ。
最近睡眠不足だったりした?
がんばるのはいいけど、無理しちゃダメじゃん。
睡眠不足は美容の敵じゃなかったっけ?
一緒に過ごしてた時よく言ってたから、今でも覚えてるよ。
ん?
ここ?
ここは僕の別荘。
自分で建てたんだよ。
仕事の合間とか、休みの日を使って、ちょっとずつね…。
ふふ。
すごいでしょ?
(織姫、自分の足に足枷が付いていることに気付く)
あぁ、
君が寝てる間に付けさせてもらったの。
だって、
そんなの、ヤダもん。
…何…それ…?
『帰らなきゃいけない』って…。
なんであっち側に戻りたがるの?
ここにいればいいじゃん!
君は僕がいなくても楽しく毎日を過ごしてるんだろうけど、僕は違う。
たった1人で、どれだけ寂しい思いしてるか知らないから、『帰らなきゃいけない』なんてひどいこと言えるんだよ!
ごめん、ごめん。
大きい声出して…。
つい感情的になっちゃった…。
眠ってた時間?
気にしなくていいよ。
それよりも喉
飲み物持ってこようか?
…もぅ…。
そんなに気になるなら、ヒントね。
七夕は終わったよ。
だから、帰るにしても君はあっち側に戻ることはできない。
ふふ。
今頃あっち側では大騒ぎになってるんじゃない?
『織姫が戻ってこないなんて…』ってね。
大丈夫。
この場所は、僕しか知らない秘密の場所。
迎えには誰も来ないよ。
だから、怒られる心配もない。
ねぇ。
前みたいに2人で楽しく過ごそ?
ずっとずーっと永遠に。
『なんで』?
そんな簡単なこと、僕に聞かなきゃ分かんないの?
あぁ…そういうことか…。
あっち側で洗脳されたんだね。
かわいそうに…。
あとでちゃんと
…僕が君と一緒にいたいのは、君と離れたくないからだよ。
世界で1番君のことを愛してるのに、1年に1日しか会えないなんて、あり
こんな
だから、君と会える七夕に合わせて、この別荘を建てることを決めたんだ。
素人が見よう見まねで建てたから、完成してからもいろいろ不具合はあって大変だったけど…。
雨漏りに、扉のガタつき、あとは…
ひとつひとつ全部直して、先週やっと完成したんだよ。
ここまでがんばれたのは、君と一緒にここで暮らすため。
とはいえ、外装に随分時間かかっちゃったから、内装は全然間に合わなくて、この通り殺風景…。
でも、ベッドだけは1番に用意したんだよ。
君に似合いそうな
部屋に何もなくても、ベッドは必要じゃん?
寝る場所が確保されてれば、あとは何とかなるし…。
あっ!
そうそう。
大事なこと言うの忘れてた。
まだ洗脳が
その
逃げるためには全部解除しなきゃいけないから。
もちろん解除の方法なんて教えてあげないけど。
ねぇ、織姫。
そんな悲しそうな顔しないで。
すぐに洗脳を
僕に君が必要なように、君にも僕が必要なんだから…。