ん?
こんな時間から、どこかお出かけ?
『飲み会』?
へぇー。
会社の?
あっそ…。
いいんじゃない。
心配?
しないよ。
なんで?
会社の飲み会なんだし、男がいるのは当然なことじゃない?
女子だけで飲むなら、『女子会』っていつも言うじゃん。
だから、『飲み会』って言った
…
やたら気合い入れてお
楽しみにしてるって、見れば分かるし。
気を付けて行っておいで。
その代わり、男の隣に座るのだけはやめてね。
服とか髪とか、君の全身に、男の匂いがつくから。
束縛とかじゃなくて、自分以外の男の匂いって嫌いなんだよ。
気持ち悪くなる…。
『なんで?』って聞かれても、知らない。
いつも、そうなっちゃうんだもん。
……ねぇ。
そっち、ちょっと寄ってくれない?
隣、座れない。
ほら。
さっさとしてよ。
(彼女の隣に座る)
…よいしょ…っと…。
こっち向いて。
メイクうまくできてるか見てあげる。
…うん。
大丈夫。
かわいいよ。
…でもさ…。
いつもよりかわいくしすぎじゃない?
うぅん。
いつもより絶対かわいいって。
マジで。
冗談だと思ってるの?
見慣れてる俺が言うからこそ、マジだと思うもんじゃない?
普通は。
まぁ、どっちでもいいけどさ…。
ただの飲み会なのに、ここまでかわいくする必要ってある?
まさか、飲み会っていうのは嘘で、浮気しに行くとか…?
痛っ!
殴ることないじゃん。
そんなことしないって分かってるよ。
だって、君の中で俺が1番だもんね?
じゃなきゃ、文句言いながらも、俺の言うこと聞いてくれないし。
なんだかんだ、俺のやりたいことやらせてくれるし。
俺ってすっごい愛されてて、幸せだなぁ。
『はいはい』って…。
俺の話なんて、全然聞いてないくせに…。
もう行くの?
行くには早くない?
へぇー。
待ち合わせね。
なら、仕方ないか。
相手の人、待たせるの悪いし。
忘れ物ない?
スマホ持った?
財布は?
あっ!
ちょっと待って!
忘れ物してる!
俺に背中向けたまま動かないでね。
(首の後ろあたりにキスマ付けてる感じのリップ音)
よし……取れた…。
はぁ!?
キスマ!?
そんなの付けるわけないじゃん。
その服、
タグ、取り忘れてたよ。
ほら。
こんなの付けて飲み会行ってたら、笑い者になってたよ?
よかったね。
恥かかずにすんで。
間違っても、キスマなんて付けてないから。
このタグ、糸で
その時に、唇が肌に触れただけ。
見えないようなとこにキスマ付けるとか、独占欲丸出しでかっこ悪いじゃん。
そんなダサいこと、俺がすると思う?
でしょ?
なら、俺へのキスマ疑惑は晴れた?
ん。
よろしい。
ちょっと急いだ方がいいかもね。
時間、ヤバいんじゃない?
帰る時連絡して。
迎えに行くから。
気を付けていってらっしゃい。