彼女をないがしろにしすぎて別れを切り出される彼氏

あ、来てたんだ。
ただいま。
はぁ…疲れた。
ジャケット掛けといて。
今日の晩飯、何?
俺の好きな物ばっかりじゃん。

ん、ごめん。
仕事の電話だ。
はい、もしもし。
(席を外す)

ごめんな。
急な仕事の電話だったから。
晩飯にしようぜ。

(手を合わせて)
いただきます。

(話半分にしか聞いてない感じで)
何?
うん。
デートね。
いいよ。
へぇ。
そんな所があるんだ。

ん?
今何話してたかって?
次のデートの話だろ?
どこだっけ?
あぁ、ごめん。
聞いてたつもりだった。

はぁ、食った、食った。
ごちそうさまでした。
美味かったよ。
じゃぁ、俺風呂入ってくる。

はぁ、いい湯だったぁ。
あ、片付けサンキューな。
お前も風呂入ってこいよ。
泊まっていくだろ?

ん?
何そんな真面目な顔してるんだよ?
真面目な話?
何?
え?
別れる?
どうして?
好きな奴でもできた?
違うって…。
じゃぁ、別れなくてよくね?
何でそんなに俺と別れたいの?
ちゃんと理由聞かせて。

あ……ごめん。
そんなに寂しい思いさせてたなんて思ってなかった。
本当にごめん。
仕事忙しいって理由だけでここのところずっとデートも行けてなかったよな。
いつも俺の家に週末お前が来て、飯作ってくれて、泊まっていくのが定番になってたし。
家のこともいつもお前がやってくれるのが当然になりすぎて甘えてた。
お前は彼女であって、家政婦じゃないのにな。
いつも優しくしてくれるお前に俺はおんぶに抱っこ状態だった。
それが心地よくて、お前の負担とか全然考えてなかった。
疲れてるのはお互い様なのに、俺は何もお前に返せてなかった。
お前から与えてもらってばかりだった。

今更もう遅いかもしれないけど、許してくれるなら、心入れ替えるから、やり直したい。
お前以外彼女にしたくない。
俺の彼女はお前がいいんだ。
頼むから、やり直させてくれ。
別れるなんてもう言わないでくれよ…。

本当に!?
今回は許してくれるのか?
ありがとう。
今までのことは、本当にごめんな。
ちゃんとお前の彼氏やる。

えっと、さっき言ってた行きたい所、調べてみようか。
【キーボード打つ音】
へぇ、いい所じゃん。
でも、ここからだと距離があるな…。
車より電車で現地まで行ってレンタカー借りる方がいいか…。

次の連休、行ってみようか。
ん?
無理はしてないから大丈夫。
少し距離はあるけど、温泉もあるみたいだし、二人でゆっくりしてもいいんじゃないか?
『日頃の感謝を込めて』と『今回のお詫び』を兼ねて、俺が全額出すからさ。
遠慮するなって。
えっと、宿、宿…。
おっ、いい所見つけた。
コテージに部屋風呂が付いてるんだって。
しかも、コテージとコテージの距離も離れてるから他の客とも会いにくいんだって。
ここ、いいんじゃないか?

あれ?
あんまり気に入らない感じ?
宿泊費のこと気にしてる?
そこは本当に気にしないでって。
こう見えてもちゃんと貯金だってしてる。
見えないって?
ずぼらそうに見えるかもしれないけど、ちゃんとしてる所だってあるんだからな!

やっと笑ってくれた。
やっぱりお前の笑顔、俺好きだ。
そういえば、最近お前の今みたいな心からの笑顔って見てなかったかも。
それだけ、お前のことないがしろにしてたんだな…。
こんなにかわいいお前をほったらかしにしてた過去の俺を殴りてぇ…。
ちょっとギューってしていい?
今のお前、マジでかわいすぎ。
こっち来い。

(耳元で優しく)
ギュー。

はぁ…癒される…。
久しぶりにお前抱きしめたかも…。
こんなにお前って柔らかかったっけ?
違うって。
太ったって言ってるんじゃないって。
女の子なんだなぁってしみじみ感じてるところ。
はぁ…いい抱き心地…。

なぁ、寂しいって思ったら言えよ?
もう我慢しなくていいから。
我慢したらお仕置きな。
ん~、そうだな……もし、我慢したら我慢させた分いっぱいギューとチューしてやる。
ふふふ、お仕置きじゃないって?
どちらかというと、お仕置きというよりご褒美に近いか?

今までないがしろにした分、これからいっぱい甘やかして、いっぱい愛してやるから覚悟しとけよ?