どうしても彼女が欲しくてクリスマスの夜に拉致った闇落ちサンタ

(ガサゴソする音)

(彼女、目が覚める)

あっ、気付いた?
おはよ。

ん?
ここ?

ここは俺と君の愛の巣。

夢なわけないじゃん。
現実だよ。
現実。

…寝起きで今の状況がまだ理解できてないのかな…?

まぁ、仕方ないか。
寝てる君を起こさないようにそっと連れてきちゃったんだし…。

寝起きでボォーっとしてる頭でも理解できるように言うと、君のこと拉致ったの。
これなら分かるでしょ?

『なんで?』って…そんなの決まってんじゃん。
君と2人きりになって、君のこと独占したいから。

これからずっと一緒だよ?

(彼女、「家に帰して」と要求する)

君を家に帰す…?

……ヤダ。

やっと2人きりになれたんだよ?
俺がどれだけこの時を楽しみにしてたか、君には分かる?
毎日夢に見るほどだったんだよ?
なのに、それを取り上げられるとか…あり得ないでしょ。

…『ストーカー』?

やめて。
あんなゲスな奴らと一緒にしないで。
俺は純粋に君と幸せになりたいだけ。
それ以上は望んでない。

(サンタ、自己紹介してなかったことに気付く)

……あぁ、そっか!
そういえば、自己紹介してなかったね。
だから、ストーカーと間違えたのか。
そっか。そっか。

順番間違えちゃってごめんね。
俺はサンタ。
よろしくね。

まぁ、そうだよね。
普通サンタが着てるのは真っ赤な服。
それが世間一般の常識。

でも、真っ黒な服着ててもサンタなんだよ?
()サンタだけど…。

闇落ちしたサンタを()サンタっていうの。
堕天使とかと同じような意味合い。
語呂がよくないから、あんまり好きじゃないんだよね…。

俺が闇落ちした理由?

そんなの、さっきから何度も言ってるじゃん。
君のことが好きだから。

(彼女、縛られてることに気付く)

ん?
(手枷てかせ)(足枷あしかせ)を外してほしいの?

それは無理。
外したら抵抗するし、逃げるでしょ?
やっと捕まえたのに、逃がすわけないじゃん。

心配しなくても、君の世話は全部俺がしてあげる。

ご飯も食べさせてあげるし、お風呂にも入れてあげる。
もちろん、トイレにも連れてってあげる。

どうお世話するのが1番ストレスを与えずに済むか、ってちゃんと勉強したから、大船に乗ったつもりで安心してお世話されてよ。

(彼女、暴言を吐く)

(嬉しそうに)こら。
そんな汚い言葉を使っちゃダメ。

(堪えきれずに)…ふふ。

君からの暴言がこんなに心地いいなんて知らなかったなぁ…。
…もっと聞いてたい。

……そうだね。
俺、おかしいのかもね。

でも、おかしくしたのは君のせい。
元々こんなじゃなかったのに、君に出会ってこんなになっちゃったんだもん。
責任取って、俺にお世話されてね?

別にいいよ。
『うん』って言わなくても勝手にお世話しちゃうし…。

あぁ、楽しみだなぁ。
君に似合うと思って買っておいた服をやっと着てもらえる。
写真、いっぱい撮らせてね。

あっ!
アルバム用意してなかった!
すぐ用意しなきゃ!

(サンタ、スマホを取り出してポチポチし始める)

(彼女、サンタの様子を見て気持ち悪そうに見ている)

(サンタ、ふと彼女の様子を見て嬉しそうに近づく)

(耳元で)…こんなおかしい俺に捕まっちゃったから、全部諦めてね。