一年がんばった彼女にサプライズプレゼントを渡す猫系サンタ

(彼女、布団に入ってスマホをいじっている)

(サンタ、鍵を開けて部屋に入ってくる)

(小声で)お邪魔しまーす。

(サンタ、起きている彼女に気付く)

なんだ、起きてんじゃん。
なら、話は早い。

とりあえず、電気()けてくれない?
暗闇の中では話しにくいから。

(彼女、部屋の電気を点ける)

まぶしっ…!
目が暗闇に慣れてると、電気の明るさでもキツ…。

…大丈夫。
(じき)に慣れてくると思う…。

ってか、部屋暗くしてるなら、さっさと寝なよ。
スマホいじってたら、いつまでも寝れないよ?

いや、分かるよ。
寝れないから寝れるようになるまで動画とか見てたい気持ち。
おすすめに出てきてて、『この動画気になる!』みたいなの繰り返しちゃうの。

でもさ、そういうのやってたら、あっという間に時間溶けて、貴重な睡眠時間削ってるってことに気づいてる?

気づいてるなら、やめな?

何をするにも体が資本。
健康でなくちゃ、やりたいことだってできないんだから。

…えっ……質問?
それは、あとで。
今、大事な話を…。

(彼女、サンタが本物のサンタなのか尋ねる)

……あぁー……うん。
本物のサンタだけど…?

いやいや。
飲み物とかいらないから。
用事だけ済ませたら出てくし…。

(サンタ、押しの強い彼女に負ける)

……あったかければ何でもいい。

(彼女、キッチンに移動)

アンタさぁ、お(人好ひとよ)しって言われない?
いきなり家に入ってきたヤツにお茶出すとか…。

そりゃ、俺の格好を見ればサンタだって分かるかもしれないけど、もしかしたらサンタの格好をしてるだけのストーカーかもしれないじゃん。
そういうこと、考えないわけ?

今後、こういうことはしないこと。
いい?

(彼女、サンタの元に飲み物を持って戻ってくる)

…ありがと。

(サンタ、飲み物の匂いを嗅ぐ)

いい匂い。

(サンタ、ひと口飲む)

んまっ!

マジでうまい!

寒さで凍えた体に沁みる…。

ん?
俺に恋人?

いるよ。
仕事っていう永遠の約束をした恋人が。

…分かってるよ。
アンタが言ってる意味の恋人の意味くらい。

そもそも、こんな仕事してて恋人ができるわけなくない?
聖なる夜に会えないヤツとか…。

『私と仕事、どっちが大事なの?』って言われて、さようなら…。
一年目はよくても毎年ってなるとさすがにね…。

(ポツリと)どこかに『それでもいいよ』って言ってくれる物好きいないかなぁ?

ねぇ。
アンタの近くにいない?
そういう物好き。
できれば、働きたくないから養ってくれる人がいいなぁ…。

もしいたら、教えてよ。

絶対ね!
約束だから!

(彼女、サンタが家に来た理由を尋ねる)

ん?
あっ、そうそう。
どうでもいい話してたら、一番大事なこと忘れてた。

手、出して。

はい。
プレゼント。

…アンタ、この一年がんばってたじゃん。
イヤなことも我慢してひたすらにがんばってた。

だから、ご褒美でわざわざプレゼント持ってきてあげたの。

(彼女、まさかのサプライズプレゼントに驚く)

いらないなら、返して。
処分する。

貰うなら文句言わないでよね。

……開けていいよ。

(彼女、プレゼントを開ける)

それ、アンタが欲しがってたヤツでしょ?

見つけるの、すっごく大変だったんだからね。
大事に使いなよ。

あと、もうひとつ。

これもあげる。
あったかい飲み物淹れてくれたお礼。

お守りみたいなもんだと思って、肌身離さず持ってなよ。
そしたら、ささやかな幸せが降り注ぐから。

(サンタ、飲み物を飲み終わる)

飲み物、ありがと。
おかげで、体あったまって、残りの仕事も終わらせられそう。

じゃぁ、そろそろ行くね。

ゆっくりしたいのは山々だけど、仕事残ってるから行かなきゃ…。
残業とか俺の主義じゃないし。

俺が出てったら、戸締まりもう一回ちゃんとしなよ。

また来年会えるように、一年しっかりがんばって。
バイバイ。

(サンタ、出ていく)