(玄関扉の開閉音)
ただいま。
うん。
今日もいっぱいがんばったよ。
それでね……えっと……いきなりなんだけど、こちらを、どうぞお納めください…。
『君の言うことを何でもきく券』10枚セットです…。
(言い訳じみた感じで)何も言わないで。
君の言いたいことは分かってる。
「はぁ!?何言ってんの?コイツ…」って思うのは、至極当然。
俺自身もそう思ってるし…。
ほんとなら、バレンタインのお返しにちゃんとしたものを返したかったんだけど、あれこれ悩んでたらわけ分かんなくなっちゃって…。
気づけば、ホワイトデー当日…。
こんなダサいことするはずじゃなかったんだけど、することになりました…。
……なんでニコニコしてるの?
こういう時って、普通怒んない?
『ダサすぎて意味分かんない!』みたいな…。
うん、まぁ……俺なりに、考えた結果ではあるけど…。
ん?
『言うこと』?
もちろん何でもいいよ。
『買い物行ってきて』とか『全身マッサージして』とか…。
なんなら、『1ヶ月家事やって』でも。
使用期限はないから、じっくり、ゆっくり考えて、やってほしいことを思いついた時に使って。
えっ……いきなり使うの?
いいけど……何すればいい?
『キスして』?
そんなことで1枚使わなくてもいくらでもするのに…。
……仰せのままに。
(濃厚でしつこい感じのキス)※長めにお願いします。
……どう?
満足してもらえた?
……もう1枚使うの?
またキス?
今度はギュー…?
いいよ。
おいで。
(彼氏、彼女を抱きしめる)※以下、彼女を抱きしめたままで。
家で小学生じみたダサいお返しを渡すことになっちゃって……最低なホワイトデーになって、ごめんね。
君の好みじゃなくても、アクセサリーとかブランドバッグとかの方がよかったよね…。
……こんなホワイトデーでもいいの?
ほんとに?
俺に気を遣って言ってない?
……ありがと。
君の優しさに、いつも救われるなぁ…。
もっとしっかりして、君に頼られる男にならなきゃ…。
……えっ……この流れでまた1枚使うの?
今度は何?
『今夜のお誘い』…?
……今貰った券は全部返す。
そういうことで券を使わないの。
恥ずかしい気持ちでいっぱいになって、エッチぃお願いするのが苦手なのは分かってる。
でもさ、せっかく券を使うなら、もっとエッチぃお願いにしてほしいなぁ。
たとえば、『体中舐めてほしい』とか『いっぱい奥突いてほしい』とか、そういうの…。
普段できないことを味わうために使って。
……どうする?
券、使う?
……なら、何をお願いする?
ふふ。
なんかクセになりそう。
恥ずかしくて顔真っ赤にしながら、君の口から普段言わないようなエッチぃことを言われると、たまらなく興奮する…。
(触れるだけのキス)
君の願いを叶えつつ、とびっきり気持ちよくしてあげる。
最高のホワイトデーの夜にしようね。
(濃厚なキス)※キスしたままフェードアウトしてください。