(パソコンのキーボードを打つ音)※以下、打ちながら
(同期、登場)
…ん?何?
見て分かんない?
今、忙しいの。
あとにして。
(キーボード打つのをやめる)
(溜息)はぁ…。
うるさいなぁ。
30秒だけ時間あげるから、さっさと要件言って。
『今夜の予定』?
別に何もないけど…。
『飲み会』?
…行かない。
めんどくさいだけだもん。
『またぁ?』って俺が断るのが最初から分かってるなら、誘いに来ないで。
大勢でワイワイ飲むより家でテレビ見ながら一人で飲む方が好きって知ってるんだから…。
『冷たいヤツ』って思われてもいいよ。
すでにそう思われてるし、今更でしょ。
話、それだけ?
なら、もう邪魔しないで。
(先輩、現る)
あっ、先輩。
お疲れ様です。
…俺に言いたいこと?
いきなり、何すか?
書類に不備でもありました?
……『彼氏ができた』…。
それは、おめでとうございます。
お相手は相談してた人?
そっすか。
ツンツンなんかしてないっす。
気のせいじゃないっすか?
これが俺の通常運転っす。
(先輩のスマホの通知音が鳴る)
……彼氏さんっすか?
なんて?
ふぅーん。
『今夜一緒にご飯』ね…。
幸せいっぱいって感じっすね。
あぁー、そういう
プライベートなことは、お二人だけの秘密にしといてください。
ってか、先輩。
こんなとこで油売ってていいんすか?
彼氏さんとご飯食べるなら、定時で上がらないとでしょ?
このまま話してたら、残業することになりますよ?
(後輩、席を立つ)
(棒読みな感じで)あぁー、なんか喉渇いたなぁ。
コンビニまで飲み物買ってきます。
はぁーい。
分かってますって。
サボんないっすから。
10分で戻ります。
(同期に対して)…ちょっと付き合って。
(後輩、フロアから離れる)
(溜息)はぁ…。
どんな顔してデスクに戻ればいいんだよ…。
……そ。
ずっと恋愛相談にのってた。
『今度出かけるんだけど、こっちの服とこっちの服、どっちがいいと思う?』とか『男の人が好きなご飯って何?』とか…。
ぶっちゃけ知るわけないじゃん?
デートの相手が俺なら大好きな先輩を自分好みにプロデュースするために何でも答えてあげるけど、どこの誰だか知らない相手のために真面目に答える義理なんかないし、全部適当に答えてた。
……そしたら、うまくいったっぽい…。
あ゛ぁ゛ー、マジで最悪…。
別れてほしいけど、幸せにもなってほしい…。
こんな気持ちになるくらいなら、さっさと告っとけばよかった…。
……ねぇ。
今夜の予定は飲み会行くだけ?
だったら、俺に付き合ってよ。
徹夜でゲームからのヤケ酒パーティー。
負けた方が罰ゲームで飲み続けるっての、どう?
なんで『パス』?
前に『ゲームに付き合え』って散々言ってきてたから、今夜付き合ってあげるって言ってんのに…。
(煽るように)……ふぅーん。
逃げるんだ。
だって、『やらない』ってことは、逃げるってことじゃん。
違う?
はい、決まり!
じゃぁ、『飲み会は二人欠席』って連絡しといてね。
誘ってきたのはそっちなんだから、連絡するのもそっちでしょ。
別々に連絡するとか、非効率的すぎ。
あっ!
あと、定時で上がれるように仕事片付けといて。
残業なんて許さないから。
いい?
分かった?
ん。
じゃぁ、またあとで。
(全力の煽りで)ビビって逃げないでね?
(後輩、その場を離れる)