(重い扉が開く音)
(桃太郎が大広間に入ってくる)
(歩み寄る足音)
誰だ!?
(鬼、桃太郎に気付く)
…お前…桃太郎…?
桃太郎だよな?
子供の頃、秘密基地で一緒に遊んだ…。
だよな!
うわぁ……久しぶり。
何やってんだよ。
え?俺?
俺は頭領やってる。
「俺は頭領って器じゃない。もっと
今時、世襲制とか時代錯誤もいいとこ…。
(鬼、桃太郎の様子がおかしいことに気付く)
……どうした?
深刻な顔して…。
……うん。
今の鬼の頭領は俺で間違いない。
(察したように)……あぁ、そっか…。
鬼の頭領を倒しに来たんだな?
(深い深呼吸1回)
……よしっ!
ひと思いにやってくれ。
抵抗なんかするかよ。
そもそも鬼と人間だぞ?
ガチで抵抗したら、お前なんか簡単にねじ伏せられるわ。
……お前になら……惚れた相手になら、倒されてもいい。
むしろ、本望だ。
(笑いながら)なぁーに鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔してんだよ。
一緒に遊んでた子供の頃から、ずっと思ってた。
お前だけを。
とはいえ、お前と俺は人間と鬼じゃん?
俺らが生まれる、はるか昔からお互いの種族同士がいがみ合ってるのに、恋愛なんかしたらどうなるか…なんて、子供でも簡単に想像がついた…。
だから、この思いがバレる前にお前から離れたし、誰にも言うつもりはなかった。
……けど、こうやって大人になって再会して、いざ倒されるってなったら、この思いを伝えないと死んでも死にきれない気がして…。
お前がやりにくくなるのを承知で言った。
卑怯なことしてごめん。
(空気を変える感じで)さぁ、やってくれ。
(鬼、覚悟を決めて目を瞑る)
(桃太郎、何もしない)
……あの……桃太郎さん…?
できれば、さっさと済ませてもらえるとありがたいんだが…。
覚悟が揺らぎそうになる…。
(桃太郎が抱きついてくる)
(鬼、驚いて目を開ける)
あっぶな…!
いきなり抱きついてくんなよ。
(鬼、泣いている桃太郎に気付く)
……泣いてんのか?
泣くなよ。
最後くらい笑ってるお前の顔が見たい…。
……へっ…?
お前も俺が好き…?
…マジで?
いつから…?
……『子供の頃』って俺と一緒じゃん。
両想いだったんだな。
俺ら。
だったら、俺を倒すって話は…?
最初から倒すつもりなかったのかよ…。
勘違いさせやがって…。
ん?
話?
何?
…『村での計画』?
それ、俺が聞いていいの?
(桃太郎、村での計画を話す)
(相槌数回打つ)
なるほどな…。
村のヤツら全員で俺を倒しにくる計画をお前が一人で乗り込むからって説得してくれたんだ…。
ありがとな。
でも、このあとどうすんだよ。
村に戻るんだろ?
俺が生きてるって分かれば、お前の命が危なくなるんじゃ…?
あのなぁ…。
大丈夫じゃないくせに『大丈夫』って言うのやめろ。
何かいい案は…。
(すごく悩んでる感じで)ん゛ん゛ー……あっ!
……俺と駆け落ちするか?
ここからも、お前の村からも、遠く離れた誰も知らないところに行って、ひっそりと二人で暮らそう?
……頭領?
そんなの、今すぐ捨ててやる。
次の頭領は書き置きに指名しとけば、変な争いにはならないはずだし。
俺は頭領の肩書なんかよりお前がいてくれればいい。
……お前は、どうしたい?
(桃太郎、『一緒に行く』と答える)
一緒に行く?
本当に?
すっっっっっっごい貧乏でちょっとした
(桃太郎、無言で頷く)
(鬼、桃太郎を抱きしめる)
ありがとう。
俺の全部を賭けて幸せにする。
……愛してる。
(濃厚なキス)※省略可