小鳥遊きの
voice:小鳥遊きの

好きな子のことは些細なことでもしっかり見てる同級生(完)

(駅にて)

…よっ。
花火大会ぶり。

これから帰る感じ?

…そっか。

ごめんな。
駅で待ち伏せみたいなことして…。

こんなことしたら嫌われるって分かってんだけど、どうしてもお前が帰る前にあの日の返事を直接聞きたくて我慢できなかった…。

……答え、出た?

(溜息)はぁ…。
やっぱ、答え出ないかぁ…。
なんとなく、そうなんじゃないかなぁとは思ってた。

どうせお前のことだから、『今までただの友達としか思ってなかったのに付き合うって考えらんない。とはいえ、適当に答えるのも違う気がするし…』って、クソ真面目に考えた挙げ句、(悶々もんもん)として、どうしたらいいか分かんなくなったんだろ?

ほんと、学生の頃から変わんないよな。
お前って。

(ドヤァな感じで)ふふん。
お前のことは、だいたいお見通し。

伊達にお前のこと見てないっつーの。
好きな子の取るに足らないような些細なことも見逃さないくらいには、見てる。

……疑ってるだろ?

いいよ。
お前のこと見てた証拠教えてやる。

今は忘れてるかもしれないけど、思い出したらきっと一番忘れたい恥ずかしい出来事。

その日は台風が接近してるせいで朝からどんより曇り空で風の強い日。
次の授業は移動教室なのに、忘れ物を取りに教室まで戻ったせいで予鈴ギリギリ。
普段なら廊下を絶対に走らないはずのお前が、授業に遅れたくない(一心いっしん)で珍しく走ってた。
そしたら、何もないところで(盛大せいだい)に転んで、膝擦りむいたよな。
スカートがめくれてパンツ丸出しにして…。
膝が痛くてかなわないのと、パンツ丸出しにした恥ずかしさで涙目になりながら誰にも見られてないか周りキョロキョロ見渡して、急いで走り去った。

(耳元で)ちなみに、パンツの色は黒。

ふふ。
その反応……正解だな?

ヤダよ。
忘れるなんて。
そんなもったいないことしたら(ばち)が当たる。

お前のことは、死ぬまで忘れない。
絶対に…。

(言いたいことがあるけど言えない感じで)……あとさ……その……やっぱ、いいわ。
そろそろ電車乗らないとだろ?

(『言いたいことを言え』と、彼女に迫られる)

(観念して白状する感じで)いやぁ……ん゛ん゛ー……まぁ、いっか。

まだ先になるんだけど、仕事でそっち行くからさ……会えない?
今度はゆっくり飯でも…。

そっちの店よく分かんないし、お前のおすすめの店に行きたい。

(洒落しゃれ)とかお(洒落しゃれ)じゃないとか、気にしなくていいよ。
お前とだったら、その辺の居酒屋でも全然アリだし。
一緒に飯食って、楽しい時間を過ごせるなら、どこだっていい。

……ダメ…?

決まりな。
そっちに行く日にちが正式に決まったら連絡する。

その時には絶対返事もらうから。

……油断してただろ?
いい感じに話題が()れたと思って…。

ったく…。
ちゃんと俺のこと考えてくれよ?
考えてくれなきゃ、考えるように毎日電話なりメッセージなり送り続けてやる。
「おはよう」から「おやすみ」まで。

さぁ?
冗談かどうか、今までの俺を見てれば分かるんじゃない?

ほら。
もう行かないと乗り遅れるぞ?

じゃぁ、気を付けて帰れよ。
またな。