(チリーンみたいな鈴の音)
ようこそ。
死後の世界へ。
僕はこの世界の神様。
で、君はついさっき死にました。
……あれ?
結構冷静だったりする?
いや……普通はいきなりすぎる展開についてこれなくて『なんでなの!?元の世界に戻して!』って取り乱す子が多いから…。
あぁ…なるほどね。
たしかに、君の世界で流行ってる転生モノ的な展開に似てるかも。
だから、すんなり受け入れちゃってるってわけか。
生きてた頃は読んだりした?
ふぅーん。
そっか…。
君の死因?
神といえど、そこまでは分かんない。
けど、こういうことになった元々の原因は分かってる。
がんばりすぎ…いわゆる、過労ってヤツ。
毎日サービス残業をさせるブラックな会社に、自分の仕事を部下に押しつけて回るクソ上司…。
『無理です。助けてください』って言えるような状況じゃなかったのは理解するけど、あれはほんとに
誰も彼も自分が得をすることしか考えてない。
(怒りを露わにして)なんで自分の仕事を他人にやらせる?
なんでがんばってる人に正当な対価を支払わない?
全部、全部…普通に考えて、あり得ない!
(冷静になって)……うん。
偶然君のことを見つけて、それから気になって、ずっと見てたからよく知ってる。
ここんとこ、正常な判断ができなくなってたでしょ?
何が正しくて、何が間違ってるか……それすらも分かんなかったのはね、毎日ほとんど寝てないから。
『もう無理だよ。そろそろ休もうよ』って体が悲鳴あげてたのに、君は気付かないフリをし続けた。
その結果がコレ。
……分かった?
待って。待って。
そんな悲しそうな顔しないで。
別に怒ってるわけじゃなくて…。
あっ!
そう!そう!
君がこっちの世界に来るってなった時に、君が勤めてた会社とクソ上司には君の代わりに天罰を与えといたから。
どんなことかは、秘密ぅー。
ん?
知りたいの?
どうしよっかなぁ?
ほんとは教えちゃいけないことになってるからなぁ…。
特別に教えてあげる。
知りたい方、ひとつだけ選んで?
クソ上司の方?
じゃぁ、ちょっと耳貸して?
(内緒話で)毎日悪夢を見る呪いかけといた。
地味にイヤじゃない?
寝るたびに悪夢って…。
君だって眠れなかったんだから、クソ上司も眠れないつらさを思い知ればいいんだ。
目には目を、歯には歯を、不眠には不眠を……ってね。
君もそう思うでしょ?
……やっと笑ってくれた…。
君は笑顔が一番だよ。
すごくかわいいんだもん。
神様の俺が言うんだよ?
嘘なわけないじゃん。
(アラームが鳴る)
ヤバっ!
時間が…。
ごめんね。
俺がどうでもいい話しちゃったせいで、時間がないから手短に…。
…転生して、もう一度人生やり直してみない?
転生するのは元の世界とは別の世界になるけど…。
何になるのも君次第。
ただし、前世みたいな不運に遭わないように、幸運の加護をつけさせてもらうよ?
これをつけとくことで、毎日大小問わず君にとっての幸運が訪れるから。
あと、それとは別に、君が望む加護をつけてあげる。
前世でがんばったご褒美だと思って受け取って。
何でもいいよ。
「使っても、使ってもお金の減らない財布」とか「チートな能力」とか…。
……ほんとにそれでいい?
あとから、『やっぱ、今のナシ!』はダメだからね?
(加護をつける)
……はい。
加護、ついたよ。
(再度アラームが鳴る)
時間だね…。
もう無理しちゃダメだよ?
俺はずっと君の味方なことを忘れないで。
(おでこにキス)※ 省略可
次の人生では、幸せになりますように。