(彼女、来店)
ようこそ。
いらっしゃいませ。
お席にご案内いたしますね。
こちらにどうぞ。
(女の子が席につく)
久しぶり。
前に来てから、だいぶ
もう来てくれないのかと思った。
だって、「また来てね」って言ったのに、全然来てくれないんだもん…。
…そっか…。
いろいろ忙しかったんだ…。
お疲れ様。
もう忙しいのは終わったの?
まだ忙しいんだ…。
あんまり無理しちゃダメだよ?
ほんとに大丈夫?
…なんとなく、君の『大丈夫』は大丈夫じゃない気がする。
つらいのに仮面で隠して平気なフリしてそう。
…違う?
…やっぱり…。
俺も同じタイプだから、よく分かる。
がんばるのもいいけど、無理して体壊したら元も子もないんだからね?
健康第一。
って、俺が言っても説得力の
でもさ、実際のところ体壊したら、しばらく来れなくなるでしょ?
それは……すごく寂しい…。
嘘じゃないよ。
今日まで毎日「まだ来ないのかな?」「もうそろそろ来てくれるかな?」って、君のこと待ってたくらいなんだから。
…その顔、信じてないね?
ひどいなぁ…もう…。
とりあえず飲み物選んで?
それから、この話の続きしよ?
今日は何にする?
はぁーい。
じゃぁ、ちょっと待っててね。
(少し間を開ける)
お待たせ。
はい、どうぞ。
で、さっきの話の続きだけど…。
ん?
話したいこと?
何?
…えっ!?
SNSのフォローとチャンネル登録してくれたの!?
高評価にコメントも!?
ありがとう!!
すっごい嬉しい!!
どうだった?
俺の動画。
健全な全年齢モノばっかだったでしょ?
ふふ。
いっぱいドキドキして、楽しんでもらえてよかった。
…動画見て、俺に沼っちゃったの?
俺、そういうの本気にしちゃうタイプだから、嘘だったら怒っちゃうよ?
なんてね。
怒っちゃうってのは冗談だけど、本気にしちゃうってのはほんと。
沼るってことは、めちゃくちゃ好きってことじゃん?
好きって言ってもらえて、イヤな思いするわけないよ。
素直に嬉しいし。
でも、沼るのはいいけど、ほどほどにね。
前に言ったこと、忘れちゃダメだよ?
覚えてるなら、いいけど…。
危ないことに手を染めてまで
俺との約束。
(彼女のスマホの通知音が鳴る)
もう行っちゃうんだ…。
君との時間はあっという間だなぁ…。
もっといろんな話ができたらいいのに…。
残念…。
これからお出かけ?
なんだか楽しそうだから…。
そっか。
楽しんできてね。
チェキ?
俺と?
いいよ。
今日はどんな感じで撮ろっか?
希望ある?
ん。
了解。
…ふふ。
いや、この間のぎこちなさが嘘みたいだなぁって思って。
俺が「もっと近くに寄って」って言わなきゃ近くに来てくれなかったくらい警戒心むき出しだったのに、今日は積極的に近くに来てくれる。
うぅん。
イヤじゃない。
むしろ、嬉しい。
それだけ俺のことが好きって証拠でしょ?
照れてる。照れてる。
かーわいい。
じゃぁ、そのかわいい顔のまま、撮るよ?
待ったなし。
はい、チーズ。
(チェキを撮る)
うーわ…かわいすぎなんですけど…。
ズルいくらいかわいい…。
見れば分かるって。
ね?
かわいいでしょ?
…メッセージも書いてほしいの?
いいけど、追加料金になるよ?
分かった。
なんて書けばいい?
俺のサイン?
……サインか…。
どうしよ…。
いやぁ……今までそういうお願いなかったし、サインとか考えたことなかったからないんだよね…。
とりあえず今日のところは普通に名前書くのでもいい?
(ペンでサインを書く)
はい、どうぞ。
なんか照れる…。
サイン求められたの初めてだったんだよね…。
そ。
俺の初めて、君に奪われちゃった。
ただ名前を普通に書いただけのかっこ悪いサインが付いた、このチェキ。
すっごいプレミア付いてるから、大事にしてね?
じゃぁ、お会計はこちらになります。
はい。
ちょうどお預かりいたします。
次来てくれた時、またチェキ撮ろうね。
で、サイン入れてあげる。
うん。
それまでにかっこいいサイン作って、書く練習しとく。
いいよ。
期待してて。
忙しすぎて、いろいろイヤになったら息抜きにおいで。
いつでも待ってるから。
それじゃ……またのお越しをお待ちしております。