君の味方はここにいる

(ドアを開ける)

…やっと見つけた…。

はぁ…。
走り回って疲れたぁ…。

こんなとこで隠れてサボってちゃダメじゃん。
って、サボりの常習犯が言うなって話か…。

(ドアを閉める)

…泣いてたでしょ?

目こすったから赤くなってるし、メイクもちょっと落ちてる。

今更隠しても無駄。

誰かに意地悪された?
キツいこと言われた?

違うなら、何があったの?
外で泣いたりしない君がこんなとこでひっそり一人で泣いてるくらいだから、相当つらいことがあったんでしょ?

もし話せるなら話してくれない?
俺でよかったら話聞くよ?

(相槌数回)

そっか…。
失敗して、自己嫌悪に押し潰されて泣いてたのか…。

相変わらず、がんばり屋さんなんだから…。
がんばるのはいいけど、君の場合がんばりすぎ…。

(彼女を抱きしめる)

もう泣かなくていいよ。
俺がついてる。

人間なんだから、失敗するのは当たり前。
失敗した後、どうフォローするか、どう今後に活かすか…そこが大事。
落ち込むだけなら、誰でもできるでしょ?

もし、一人できないなら、俺も手伝うよ?

うん。
大丈夫。
時間なら腐るほどあるから。
仮に時間がなかったとしても、無理矢理作る。
君が困ってるのに、ほったらかしにするなんてできないもん。
そんなことしたら、「今頃何してんのかな?」とか「困ったことになってないかな?」とか、気になりすぎて何も手につかないって…。

想像つくでしょ?

ほんとに無理な時は「ごめん。今は無理」って言うから。
それ以外は気にせず甘えてほしいな。

で、俺は何したらいい?
俺にできること、何でも言って。

…『ない』の?

分かった。
やれるだけやってみて、ほんとに困ったらすぐ連絡すること。
それまでは君からのSOSの連絡がくるまで待ってる。

いい?
約束だよ?

(彼女から体を離す)

ん?
あぁ……用事があって探してたけど、(たい)した用事じゃないから、今はいい…。

ほんと。ほんと。
マジで大丈夫。

(溜息)はぁ…。
こういう時に俺が弱い顔するの、ズルい…。
言わなかったら悪いことしてる気分になるじゃん…。

……俺の用事は……ちょっと疲れたから、君を抱きしめたかっただけ…です……。

ね?
俺の用事なんてたかが知れてるの。
とりあえずは君が優先。
全部終わった後でいっぱい抱きしめさせて。
それまでは我慢してる。

(彼女が抱きついてくる)

あのね、俺の話聞いてた?
終わってからさせてって。
今はダメ。

…いろいろ我慢できなくなりそう…。

泣いてるのがどういう理由であれ、君の泣き顔ってだけでヤバいのに…。

…だって、君の笑顔が一番好きだけど、同じくらい泣き顔も好きなんだもん…。

(触れるだけのキス)

…ごめん。
誰か来るかもしれない中で、キスなんかして…。
やっぱ、我慢できなかった…。

『ありがとう』はこっちのセリフ。
今のキスのおかげでやる気(みなぎ)ってる。

君は?
いけそう?

ん。
さっきの約束、忘れないこと。
俺は君の味方だから。

…無理しない程度にがんばっておいで。