やっと着いた…。
おーい。
起きて。
部屋に着いたよ。
宴会はまだ続いてるけど、君は途中退場。
酔いすぎて、周りに座ってるヤツらに絡んでたから、俺が抱えて部屋まで連れてきた。
飲むなとは言わないけど、ほどほどにしないと…。
酒は飲んでも飲まれるな、だよ。
じゃぁ、俺は戻るから。
何かあったらスマホに連絡して。
…あのさ……手、離してくれない?
『質問』?
…いいけど、答えたら手離してくれる?
で、何を聞きたいの?
『彼女がいるかどうか』?
彼女は…いるよ。
年上の彼女が…。
それが何?
えっ…好き?
……マジ…?
…ごめん。
その気持ちには、こたえられない。
その気持ちにこたえたら、2人に失礼じゃん。
二股野郎の浮気者…。
そんなヤツに俺はなりたくないから。
ほんとにごめん。
(彼女に手を引かれる)
わっ!?
…いてて…。
いきなり手引いたら倒れ込むって分かっててやったでしょ?
…ったく…。
ねぇ……首に回してる腕、どけてくれない?
こんなとこ誰かに見られたら勘違いされる…。
ってか、質問に答えたんだし、離してくれるって約束だよね?
ちょっと待って!
胸、当たってる!
いい加減にして!
これ以上は怒るよ?
悪いけど、俺は彼女一筋。
胸が当たっただけで簡単に発情するような理性の
彼女以外とはキスだって、その先だってしない。
どんなに誘惑しようとしても君の努力は無駄。
別に君に魅力がないって言ってるわけじゃないじゃん。
君は十分魅力的だと思う。
だからって、それを俺に向けるのは間違ってる。
俺ではない、君のことを本気で愛してくれる誰かに向けるものだよ。
こら!
『1度だけ…』なんて言うもんじゃないよ。
もっと自分を大事にしな?
一夜限りの関係なんて、自分ばっか傷ついていいことなんてないんだから…。
そんなことしたら、いつか絶対後悔する日がくる。
今は分かんなくていいよ。
本気で愛する人に出会ったらきっと分かるから。
あれ?
ご飯前にお風呂入ったの?
そっか…。
いい匂い…。
こういう気遣いができるのって女の子ならではだよね。
うちのヤツらは、お風呂なんか二の次…。
『飯だ!酒だ!宴会だ!』って騒ぐの大好きなヤツらだし…。
俺以外はかなり飲んで、いい感じに出来上がってて、
あれ?
知らない?
俺が
結構有名で皆知ってることだと思ったんだけど…。
過去にね、いろいろあったんだよ。
知らない方が幸せなことだってあるから、これ以上は聞かないで。
今まで酒が飲めないことを散々バカにされたけど、今回ほど飲めないことに感謝したことはないかな。
こうして、君を部屋まで連れてくることができたんだもん。
……さっきはしないって言ったけど、やっぱ、キス…してもいい?
なんかしたくなっちゃった。
胸に触れるまでは我慢できたけど、君のいい匂いを嗅いだら我慢できなくなっちゃって…。
誰だって最初は警戒するでしょ。
うまい話には裏があるって言うじゃん。
ドッキリ的な何かがあるんだと思ってたんだもん。
俺だけ何も聞かされてなくて、『テッテレー!』って皆が部屋に入ってきてネタばらし…みたいな…。
へぇー。
じゃぁ、ほんとに誰も来ないんだ…。
なら、キスして止まれなくなったら、最後までシてもいい?
だって、そういうことでしょ?
若い男女が暗い部屋の中にいれば、ヤることと言えば…ね。
誘惑されて、その気になっちゃえば『好き』とか『好きじゃない』とか関係なくない?
男なんて、気持ちなんかなくったって、エッチぃことできる生き物なんだよ。
ここまで誘惑しておいて、『待った』はナシ。
その気にさせた君が悪い。
言っとくけど、優しくするつもりないからね。
優しくするのは彼女だけ。
その代わりと言っちゃなんだけど、”今まで感じたことないような気持ちいい”をあげる。
『これ以上気持ちいいことしないで!』って思うくらいには。
(触れるだけのキス)
バーカ。
本気で俺がキスすると思った?
んなわけないじゃん。
言ったでしょ?
彼女一筋だって。
あの言葉に嘘
それに、俺の手越しのキスだけで真っ赤になってるようなお子ちゃまを相手にはできないわ。
騙してないじゃん。
誘惑のお手本を見せてあげただけ。
こうやってその気にさせるんだよって。
実際、キスしてその先までシてもらえるって思ったんでしょ?
だったら次は、これくらいできるようになってから出直してきな。
まぁ、次があれば、だけどね?
さてと……俺行くけど、部屋の鍵、ちゃんとかけて寝るんだよ。
いい?
じゃぁ、おやすみ。