小鳥遊きの
voice:小鳥遊きの
天蘭-soran-
voice:天蘭-soran-

悪い虫から彼女の体を守るために赤い華を付ける彼氏

ねぇ。
今、時間いい?
聞きたいことがあるんだけど…。

 (彼女:「…何…?」)

回りくどい言い方は苦手だから、単刀直入に聞くね。
……最近かわいくなりすぎじゃない?

 (彼女:「……は?」)

誤解しないでね?
今のは、「今までがかわいくなかった」って意味じゃないよ?
今までも十分すぎるくらいかわいいんだけど、それに輪をかけて最近はかわいくなってる気がして…。

 (彼女:「何も変わってないよ」)

…何も変わってないの…!?
ほんとに?
メイクとか、ファッションとかも?

 (彼女:「うん」)

そっか…。
だったら、あの話は事実だったんだ…。

 (彼女:「あの話って?」)

ん?
今のはただの(ひと)(ごと)
気にしないで。

……とは言っても、気になるか…。

くだらない話だけど、聞いてくれる?
君と付き合うずっと前に聞いて、最近まで全然信じてなかった話。

 (彼女:「うん」)

この話は、女の子を(はな)に例えた話でね。
付き合う前の女の子は皆、(はな)(つぼみ)なんだって。
『これから(はな)を咲かせるよー』って眠ってる状態。
それが、付き合い始めると、大輪の(はな)を咲かせるの。
『綺麗でしょ?もっと見て!』ってアピールするために。

で、そうなったら、『いい匂いだなぁ』『綺麗な(はな)だなぁ』って、いろんな虫が寄ってくるでしょ?
当然っちゃ当然なんだけど…。

今の君はまさに大輪の(はな)咲かせてる状態で、俺だけを夢中にさせてればいいんだけど、他の男共……悪い虫も()き放題。

このことに気付いてる……わけないよね…。

 (彼女:「気のせいじゃない?」)

気のせい、ね…。
ほんとに気のせいだったら、どれだけよかったか…。

 (彼女:「そうなの?」)

付き合い始めてちょっと経つけど、俺の周りで君のこと狙ってるヤツ多くてさ…。
俺と付き合ってるって知ってるのに狙ってるヤツもいるし…。

だから、気が気じゃないんだよ…。

 (彼女:「それ、ほんとなの…?」)

うん。
ほんと。

『今度告ろっかな』みたいなこと言ってるヤツもいた…。

 (彼女:「聞き間違いじゃなくて?」)

聞き間違いじゃない。
わざと俺に聞こえるように言ってた。
俺が不安になるように…。

気にしないように、考えないようにってすればするほど、余計に気にしたり考えたりして、ドツボにハマっちゃって…。

(彼女をそっと抱きしめる)

告られても、俺の彼女やめたりしないよね?
別れたりしないよね?

 (彼女:「うん。別れないよ」)

…ごめん…。
『別れない』って言ってくれたけど、まだ安心できない…。

……”俺の”って跡、付けていい?
そしたら安心できると思う。

 (彼女:「跡?」)

そ。跡。
いわゆるキスマってヤツ。

見えるとこに付けたいけど、ダメだよね…?

 (彼女:「見えるとこは絶対ダメ!」)

じゃぁ、服で隠れるけど見えやすい場所に付けさせて?

ん゛ー、そうだな……鎖骨の下とか…?

そこなら、上着着てれば見えないし。
…ダメ?

 (彼女:「1つだけだよ?」)

うん。
1つしか付けない。
約束する。

…ありがと。

(キスマを付ける)

綺麗に付いたよ。
まるで、ほんとに赤い(はな)が咲いたみたい。

薄くなったら言ってね。
何度も何度も、君の体に濃く赤く綺麗に”俺の”って(はな)を咲かせ続けるから。