(あくび)ふぁ…
あれ、いない?
布団が冷えてる…。
珍しく早起きでもしたのかな?
おはよ~。
……ってここにもいない?
昨日、『今日はデートしようね』って約束したのに、僕に黙ってどこか行っちゃった?
そんなわけないよね。
そんなことしたことないもん。
ねぇ、家の中にいるの?
どこに隠れてるの?
ねぇってば!
ん?
こっちから音がした…。
【ドアをノックする音】
ねぇ、いるの?
入るよ?
大丈夫?
顔、真っ青だよ。
(小声で)
生理きちゃったかな?
とにかく床に座ってたら体冷えちゃうから、とりあえずソファーまで行こう?
立てる?
お…っと。
ふらふらだし、顔が真っ白…。
もしかして今、目の前真っ白で何も見えてない?
(小声で)
貧血だな…。
ちょっとごめんね。
君はお姫様抱っこ嫌いかもしれないけど、ソファーまでだから、ちょっとの間だけ我慢してね。
しっかり僕に掴まっててね?
下ろすよ。
よ…っと。
このまま横になって、ほんの少しだけ待ってて。
はい、毛布持ってきたから掛けてて。
今お湯沸かしてるから湯たんぽできるまでもう少し待ってて。
ココアも作ってあげるから。
どうしたの?
急に泣き出して…。
ん?デート?
それはまた今度でいいよ。
いつでもできるでしょ?
確かに楽しみではあったよ。
久々に君と同じ日に休日が重なったんだもん。
でも、それよりも君の体の方が大事だからね。
あっ、お湯が沸いたから、ちょっとだけ離れるね。
はい、湯たんぽ。
お腹に入れて、ちゃんと温めて?
あと、ココアね。
熱いから舌を火傷しないようにね。
君がココア飲んでる間、後ろからギューってしていい?
じゃぁ、ちょっと後ろ失礼するよ?
よいしょ…っと。
僕が湯たんぽで体の外側から君のお腹を温めてるから、君はココアで体の内側から温めて。
何で生理が来たって分かったかって?
君のことなら何でも知ってるよ。
1つ目は僕より先に起きてたこと。
朝が弱くて寝起き悪い君が僕より先に起きてるなんて何かあると思うでしょ。
2つ目は脱衣所で座り込んでたこと。
朝のこんな早い時間に君が脱衣所にいることはないからね。
何か手洗いする物を洗ってたと思うでしょ。
3つ目は君の生理周期を把握してるから。
ここ2週間くらい、苛ついてたみたいだったから、そろそろ来るかなぁって思ってた。
君、生理前の2週間くらいは苛ついてるからね。
生理まで把握してる彼氏とか気持ち悪いよね…。
ごめんね。
ぇっ、嬉しいの?
普通気持ち悪いんじゃないの?
特に君は管理されたり束縛されたりするの嫌うじゃない。
だからこういうの嫌いなんじゃないの?
言い出しにくいことではあるよね。
今日みたいにデート当日に来たりしたら動くのだって億劫じゃない?
できることなら家でのんびり過ごしたいなぁって思っても、『約束だし…』って君はがんばっちゃうんだよね。
そこがいい所でもあり、悪い所でもあるんだけど…。
前に雑誌か何かで『彼氏が生理周期を把握してるのは気持ち悪い』って記事見たから、君に僕が周期を把握してることがバレたら拒否されると思って怖かったんだ。
でも、そんなことなくて僕も安心した。
…で、今日みたいなことはいつも起きてるのかな?
今日が初めてなのかな?
いつも起きてるのに、ずっと隠してた!?
本当は生理痛重いのに、僕に隠れて痛み止め飲んでたんだ。
全然気づかなかった…。
もしかして、痛み止め効いてない時でも無理して我慢してたことあったりする?
あったんだ…。
僕、彼氏失格じゃん…。
彼女の体調を気遣ってあげられないなんて最低じゃん。
(彼女の肩口に額を押し付けてる感じで)
君の体に負担ばかりかけちゃって、辛い思いいっぱいさせちゃってごめんね。
いっぱい辛い思いをさせたお詫びに、何か僕にできることある?
何かしてほしいこととかある?
今日一日ずっと側にいてほしいの?
それだけでいいの?
じゃぁ、今日は一日ずっと一緒にいようね。
今日は一日体辛いと思うから、ゆっくり休んでいて。
僕にやってほしいことあったら、遠慮なく言うこと。
それが今日の君の仕事。
それ以外は何もしなくていいからね。
僕の大好きで愛しいかわいいお姫様。
何なりとお申し付けくださいませ。