人いっぱいだねぇ。
これぞ花火大会って感じ。
あっ!たこ焼き!
あっちには、焼きそばも!
ねぇ、ねぇ。
買ってきていい?
心配しなくても大丈夫だよ?
ご飯少なめにしたから、両方買っても食べれるもん。
ん?
『そうじゃなくて…』って、どういうこと?
あぁ……”
うん。
ちょっと酔ってる感じするけど、まだ大丈夫。
ほんとにつらくなったら言うから、それまではここにいたい。
…ダメ……かな…?
ごめんね。
心配かけて。
なんか、今は外にいたい気分なの。
ここのところ、ずっとお家デートばっかだったし、こういうイベントは今しか楽しめないじゃん。
だから、全力で楽しみたいなぁって思ってね。
そ。
全力で。
「お祭りは全力で楽しみましょう」って小学校の頃に教えられたでしょ?
あれ?
小学校じゃなかったっけ?
幼稚園だったかな?
んー……まぁいっか。
どっちでも。
りんご飴だ…!
買ってくるから、ちょっと待ってて。
(1人で屋台に買いに行く)
お兄さん、1つください!
ありがとうございますっ!
(彼氏の元に戻ってくる)
お待たせ。
懐かしいって思ったら、どうしても欲しくなっちゃって…。
んーっ!
おいしいっ!
りんご飴ってこんなにおいしかったっけ?
いやぁ……子供の頃に食べて以来、全然食べてなかったから…。
味とか全部忘れてて…。
1度だけ親に買ってもらったことがあるんだけど、その時ひと口、ふた口食べただけで「もういらない」って言っちゃって…。
子供特有の気になる物を手に入れたら満足、みたいな?そういう気分になっちゃって…。
それ以降、お祭りに来ても食べ物系は一切買ってもらえなくなったんだよね。
自業自得なんだけど…。
…欲しいの?
りんご飴。
なんとなく欲しそうな顔してたから。
ひと口、食べる?
すっごくおいしいよ。
遠慮しなくていいって。
足りなかったら、帰りに買えばいいだけだし。
それに、おいしい物は半分こした方がいいんだよ。
だって、おいしい物食べると幸せな気持ちになるでしょ?
大好きな人と幸せな気持ちを共有できたら、もっともーっとおいしくなる気がしない?
ってことで、お口開けて。
「あーん」してあげる。
はい。
あーん。
どう?
おいしい?
ふふ。
よかった。
…お祭り、連れてきてくれてありがとね。
なんとなくお礼が言いたくなったの。
昔の悲しい思い出が君との楽しい思い出で上書きできたから。
(内緒話してる感じで)でも、ちょっと残念に思ってるでしょ?
間接キスのチャンスだったとか思ってたの、みえみえだよ。
君の考えてることなんか、全部お見通し。
すぐ顔に出るんだもん。
だから、食べてたとこの反対側を食べさせたの。
君だけいい思いするのはズルい…。
キスとか、いろいろ…私だってしたい…。
でも、そういうのは外では禁止。
誰が見てるか分かんないんだよ?
特に、小さい子が見てたら教育上よくないでしょ。
ダメったら、ダーメ!
この続きはお家に帰ってから…ね?