おはよう。
イブ。
あっ。
起きなくていいよ。
寝たままで…。
勝手に家に入ってごめん。
この間くれた合い鍵、さっそく使わせてもらった。
体調崩してるって聞いて、心配になっちゃって…。
気分はどう?
…だいぶ良くなってきたんだ。
よかった…。
とはいえ、まだ完全に治ったわけじゃないんでしょ?
じゃぁ、ちょうどよかったかな。
今日はいい物を持ってきたんだ。
とっておきだよ。
何だと思う?
当ててみて。
ブッブー。
ハズレ。
正解はコレ!
リンゴでした!
いったぁ…。
殴ることないじゃん。
リンゴは栄養豊富なんだよ?
知らないわけじゃないでしょ?
確かに神様は言ってたね。
『禁断の果実を手にしてはいけない』って。
でも、『リンゴがいけない』なんて一言も言ってなくない?
そもそも禁断の果実って何?
どうして食べたらいけないの?
『あれはダメ』『これもダメ』ってダメばっか言われて、「はい、そうですか」って納得できるなんて、イブって大人だね。
俺は無理。
ダメならダメな理由をちゃんと話してくれなきゃ納得できない。
…俺の言ってること、間違ってる?
別にいいよ。
殴ったこと謝んなくて。
イブは俺がここから追放されるのを心配してくれたんでしょ?
ちゃんと分かってるって。
そんなことより、切ってあげるから、一緒に食べよ?
大丈夫だよ。
リンゴは禁断の果実じゃないもん。
食べたってここから追放されることはないよ。
仮にリンゴが禁断の果実だったとしても、食べたのを知ってるのは俺ら2人だけ。
内緒にしてれば、バレないって。
それに、俺、聞いちゃったんだよね。
禁断の果実の
大きい声で言えないから、ちょっと耳貸して。
(耳元で)あのね、禁断の果実ってさくらんぼらしいよ。
理由もちゃんとあってね。
さくらんぼって、木に2個で1
なんで2個で1
でも、収穫されて売られるまでの間に2個で1
あれって、神様が人間に与えた『恋』っていう試練でね、自分の
いちいち、めんどくさいよね。
やり方が回りくどいというか…。
運命の相手なんだし、最初から一緒にいてもいいじゃん?
でも、神様的には、『恋』って試練は人間の生活に刺激を与えるためのスパイスだから必要みたい。
だから、俺らが手にすると運命がねじ曲がっちゃうから、手にすることを禁止したんだって。
まぁ、聞いた話だから、ほんとか嘘か分かんないけどね。
はい。
お
せっかくだから、あーんしてあげる。
病人なんだし、今日くらいは甘えてよ。
ね?
はい。
あーん。
どう?
おいしい?
よかった。
さっきの話?
ヘビから聞いた話だよ。
昨日散歩してる時にたまたま会って、『実は…』って教えてくれたんだけど…。
なんかヤバかった?
へぇー。
知らなかった…。
ヘビって、嘘
ここで嘘
じゃぁ、さっきの話ももしかしたら嘘かもしれないってこと…?
どうしよう…。
リンゴが禁断の果実だったら…。
イブのこと巻き込んじゃった…。
俺のせいで、ここから追放されたら…。
まぁ、いっか。
なるようになるよね。
イブが追放される時は俺も一緒だろうし。
イブと一緒なら、どこでも楽園になるはずだから。
一緒に堕ちていこうね。
愛してるよ、イブ。