あれ？
こんな時間から出かけるの？
あぁ……今日、飲み会があるって言ってたね。
ごめん。
すっかり忘れてた。
お店、どこ？
ふぅーん。
そうなんだ。
じゃぁ、終わったら迎えに行くよ。
夜、危ないし。
えぇー！？
なんで迎えに行っちゃダメなの？
変な人に会うかもよ？
どうしても迎えに行っちゃダメなの？
絶対行っちゃダメなの？
…分かった。
迎えには行かない。
家で待ってる。
それはそうと……さっきから気になってたんだけど、今日のメイク、いつもと違う？
『なんで？』って言われても、なんとなく、そう思っただけ…。
リップ？
いや……アイメイクかな？
なんか違う気がする。
全然ダメじゃない！
すっごくかわいい！
マジでかわいい！
いつものメイクもかわいいけど、今日のは特別かわいいよ。
「俺の彼女、かわいいだろー！」って大声で自慢したいくらいにね。
やったりしないよ。
今のはものの
ご近所迷惑になるし、なにより、君に怒られたくないもん…。
（彼女のスマホの通知音が鳴る）
スマホ鳴ってるよ。
確認しないの？
取るのはいいけどさ…。
ちょっと手伸ばせば届く距離じゃん。
ほんと、めんどくさがり屋なんだから。
（彼女のスマホを取ってあげる）
…えっ…。
ねぇ。
男の人の名前が表示されてるんだけど…。
これ、どういうこと？
飲み会に男がいるなんて言ってないじゃん。
そんなの行かせられるわけないでしょ。
ダメ！
絶対ダメ！
男がいる飲み会なんて危ないよ？
お酒に薬
睡眠薬とかさ…。
よくある手口だからこそ、危ないって言ってるの。
気付いたら知らない場所で、手足拘束されてて…。
エッチぃこともされちゃうかも…。
痛っ！
殴ることないじゃん。
そんなことしないかどうかなんて、分かんないよ？
人なんて、簡単に裏切るんだから…。
（溜息）はぁ…。
もういいよ…。
好きにすれば？
でも、行くなら今から言う条件のんで。
じゃなきゃ、行かせられない。
条件はただ1つ。
…キスマ、付けさせて。
また『ダメ』！？
だったら、君の靴全部隠す。
そしたら、どんなに行きたくても行けないでしょ？
ふふ。
知らなかった？
俺って、悪いこと考える時は頭の回転早いの。
（真剣な感じで）見えるとこには、絶対付けないって約束するから。
キスマ、付けさせて。
お願いします。
…ほんとに？
いいの？
わがまま言って、ごめんね…。
えっと……じゃぁ、胸元に付けたい。
そこなら、絶対服で隠れて誰にも見えないでしょ？
エッチぃことはしないよ。
ただキスマ付けるだけ。
その先は帰ってきてからのお楽しみね。
はいはい。
文句は帰ってきてから聞くから。
急がないと、時間きちゃうよ。
服、
……付けるね。
（キスマ付けてるリップ音）
……付いた。
見えるかな？
俺のって印。
赤く綺麗に付いた。
うん。
満足した。
ありがと。
付けさせてくれて。
あっ！
もう時間だね。
忘れ物ない？
大丈夫？
飲み会終わったら連絡ちょうだい。
帰ってくるまで起きて待ってるから。
うぅん。
起きてる。
ちゃんと帰ってくるか心配だし。
いい子で待ってるから、早く帰ってきてね。
…行ってらっしゃい。