彼女が自分の好きな物を答えられなくてイタズラする敬語彼氏

【パソコンのキーボードを打つ音】

なんですか?

見て分かるでしょ。
レポートやってるんです。

君みたいにギリギリまでやらなくて、(あせ)るようなことはしたくないですからね。
さっさと終わらせようと思いまして…。

だから、邪魔しないでください。
いいですね?

終わったら、イチャイチャでもなんでも付き合いますから。
今はレポートに集中させてください。

【パソコンのキーボードを打つ音】

さっきから、うるさいですよ…。
邪魔しないでって、さっき言ったばかりでしょ。
ほんとに…。

ハロウィン?
やりませんよ。
去年だって、参加しなかったじゃないですか…。

そもそも、(大人数おおにんずう)でワイワイするのが苦手なの、知ってるでしょ?
君1人で参加してください。
俺は遠くから見守ってますから。

はぁ!?
買っちゃったってどういうことです?
何にも聞いてないんですけど…。

ったく…。
(無駄むだ)な物ばかり買って…。

やめてください。
こんなの、付けたくありません。

こらっ…勝手に付けないでください。

…モフモフの…耳?
これ、なんの耳ですか?

狼…。

(溜息)はぁ…。
(じつ)にくだらない…。

もう満足したでしょ?
(はず)しますからね。

はぁ!?
『写真撮らせて』って…。
今の流れで、『はい、どうぞ』と言ってもらえると思ったんですか?

絶対にイヤです。
データとして残したくありません。
どうしてもと言うなら、君の記憶に残しておいてください。

あぁー、もぅ!
うるさい!

付き合えばいいんでしょ。
付き合えばっ!

写真は絶対に撮らせません。
その代わりに、少しだけ付き合ってあげます。

それで、いいですね?

……トリック・オア・トリート。

お菓子はいりません。
俺が甘い物が苦手なの、知ってるでしょ?

だから、お菓子じゃなくて、俺の好きな物をください。
じゃないと、イタズラをします。

そんなに悩むことですか?
全然難しくないと思いますけど。
彼女なんだから、俺の好きな物くらい、ちゃんと知ってるはずですよね?

…もぅ。
時間かかりすぎです。

今から5秒以内に答えてください。

(※ ゆっくりとカウントダウン)
5…

4…

3…

2…

1…

0…

はい。
俺の好きな物、分かりましたか?

ぶっぶー。
残念でした。

正解は……。

かわいい女の子でした。
もっと分かりやすく言うと、君です。

童話の赤ずきんでも、そうでしょ。
狼は(たい)してかわいくない子に声を()けましたか?
…してませんよね。
赤ずきんは狼から見てもかわいいから声を()けられたんですよ。
知りませんでしたか?

俺の彼女は世界一かわいいですからね。
もし、俺が狼だったら、声を()けるよりも先に食べちゃいたくなるくらいにはかわいいですよ。

うるさい(くち)ですね。
おしゃべりは、もうおしまいですよ。
(だま)ってください。

ここからは大人の時間なんですから。
ね?

………いただきます。

(濃厚なリップ音)

ん。
おいしい。

ふふ。
顔、真っ赤です。
体もさっきより熱くなってきてますね。

いい感じに()れてきた(証拠しょうこ)でしょうか。
もっと食べたいです。

レポート?
それは(あと)でやりますよ。

これからの時間は、君にイタズラをしないといけませんからね。
ちゃんと答えられなかった君が悪いんですよ。
(大人おとな)しく俺に食べられてください。

心配しなくても、ちゃんとこの体に教え込んであげますよ。
…どんなに優しい男でも狼に変身するってことをね。

(濃厚なリップ音) ※ キスしたままフェードアウトしてください。