(スタッフに向かって)お疲れ様でした。
またよろしくお願いします。
【楽屋の扉の開閉音】
(溜息)はぁ…。
【ソファーに倒れ込む音】
もう1歩も動けない…。
アイドルの子と共演するのって気を
…そういえば、共演相手が女の子って聞いてなかったんだけど?
いつもは言ってくれるのにさ。
『言ったら
仕事を選べる立場にないのは分かってるけど、僕の隣にいていいのは君だけなの。
ほかの女の子はダメなの。
ねぇ。
こっち来て。
俺の隣。
よいしょ…っと…。
へへへ。
膝枕ぁー。
気持ちいい。
いいじゃん、膝枕くらい。
僕に
少しだけ。ね?
わぁーい。
ありがと。
それにしても、放送日がハロウィンだからって、コスプレするのヤダな…。
動きづらいし、どうリアクションしていいか分かんないんだもん。
『似合ってる』?
ほんとに?
…ありがと。
じゃぁ、もう少しこのままでいる…。
(あくび)ふぁ…。
ん……ちょっとだけ寝かせて…。
眠くなってきちゃった…。
次の仕事もあるんだよね?
じゃぁ…5分
お願い。
ん……おやすみ…。
【カメラのシャッター音】
今、僕のこと撮った?
『撮ってない』って、バレバレな嘘
シャッター音聞こえたんだからね。
そんなのシャッター音で吹き飛んじゃったよ。
せっかくリラックスしてたのに、仕事モード入っちゃった…。
ほら。スマホ、貸して。
『なんで?』って、撮った写真をチェックしないといけないでしょ。
場合によっては、撮った写真消すから。
スマホ、ゲットぉー。
当たり前でしょ。
今、完全に無防備状態だったから、かっこ悪いじゃん。
そんなのデータとして残してほしくないもん。
撮るなら、せめてかっこよくキメてる時にしてほしいからね。
見つけた。
……うわっ……ひっどい顔…。
こんなの残さないでよ。
削除…っと…。
はい。返すね。
不満そうな顔しないでよ。
写真消されて怒ってるの?
いいじゃん。本物が目の前にいるんだから。
写真なんかじゃなくて、本物を見てよ。
今度からは隠し撮りなんかしちゃダメだからね。
いい?
あー、危なかったぁー。
無防備なところの写真なんて、僕のほんとの姿がバレちゃうところじゃん…。
あれ?
気付かなかったの?
普段は気を張ってるから写真とかカメラとか撮られてもバレずに済んでるけど、気を抜いてる無防備な時に撮られるとほんとの姿が写っちゃうんだ。
さっき君が撮ったデータもほんとの姿が写ってたの。
そっか…。
知ってると思ってた…。
今まで隠しててごめんね。
あのね…僕、実は吸血鬼の
だから、さっき君も言ったじゃん。
『この衣装似合ってる』って。
似合うのは当たり前なの。
吸血鬼の血が混じってるから。
あぁ…喉、
水?そんなのいらない。
今は水よりも君の血が欲しい。
出会った頃から、ずっとおいしそうだなぁって思ってて…。
少しでいいから飲ませてくれない?
なるべく痛くしないようにするから。
ちょっとだけ、その白い
えぇ~!?
『イヤ』って…。
(興奮した感じで)はぁ…はぁ…。
ごめん。
もう我慢できない。
(彼女を押し倒す)
君の血が欲しくて、欲しくて、たまらない…。
ちょっとだけ我慢して…。
(首筋へのリップ音)
…ごちそうさまでした。
ん?
どうしたの?
キョトンとして…。
『吸血鬼じゃないの?』って?
当たり前でしょ。
僕は人間だよ。
吸血鬼の
この時代に吸血鬼がほんとにいると思ったの?
ごめん、ごめん。
これもドラマ出演のおかげかな…?
君が勝手に写真撮ったから、その仕返ししただけだよ。
まさかここまで信じてくれると思わなかったけどね。
意地悪して、ほんとにごめんね。
でも、君の体、いつもより甘く感じたなぁ。
もっと食べたい…。
(彼女の首筋を舐める)
声まで甘くなってるよ。
あぁ……次の仕事せずに、このまま家に帰って君を食べたい…。
大丈夫。
今日の分の仕事はちゃんと最後までするよ。
ただ…残りの仕事がんばるから、全部終わったらご褒美ちょうだい…?
えっ!?
いいの!?
やったー。
そうと決まれば、次の仕事に行こっ。
さっさと終わらせて家に帰りたいもん。
君の全てを一秒でも早く味わうためにね。