【インターホンの音】
【玄関扉の開く音】
いらっしゃい。
あがって。
【玄関扉の閉まる音】
来てくれてありがと。
マジで助かった…。
ぼんやりとしか見えなくて困ってたから…。
家の中は物の位置とか把握してるから移動するだけなら
ただ…
さすがに、はっきり見えないのに刃物使うのは怖いから、カップ麺でも…と思ったんだ。
お湯
そう思ってた自分が甘かった…。
いざお湯を入れようとしたら、距離感がつかめなくて、お湯
大丈夫、大丈夫。
それが今朝の出来事で、今日はまだ何も食べてない…。
怖くて何もできなくて…。
まぁ、
昨日の夜、本読んでてそのまま寝落ちしちゃって…。
起きたらメガネが歪んでて、
スペアあったはずなんだけど、どこにしまったか覚えてなくて…。
結果、このありさまというわけ…。
笑いたきゃ笑っていいよ。
あ～ぁ…かっこ悪…。
こんな
ん？壊れたメガネ？
えっと……これ…。
外に出る勇気がなくて、修理に行けてない…。
この
早く修理しに行かないと明日以降にも影響してきちゃうし…。
どうしようかなぁって思ってたんだ。
えっ……ついてきてくれるの！？
マジで！？
ありがと…。
マジで助かる…。
やっぱり持つべきものは友達だよな。
…ちょっ…なんでそんないきなり不機嫌になるわけ？
俺、気に
だって、友達だから来てくれたんだろ？
連絡してもすぐに返してくれるしさ…。
『ただの友達だったらこんなことしない』？
えっ……そうなの？
こういうの、友達同士だったら普通だと思ってた…。
…じゃぁ、どういうこと…？
はっきり言ってよ。
俺が……好き…？
嘘だぁー！
だって、今までそんな
…えっ……何、その反応…。
ほんとなの？
『実は冗談でした』とか言わない？
（溜息）はぁ…。
どれだけ俺が苦労してきたか知らないだろ？
お前との関係を壊したくない
『絶対にお前に気持ちを伝えちゃダメだ』、『伝えたら全部終わる』って…。
なるべく意識しないようにしてても、気付くといつもお前を目で追ってて、無意識のうちに『好き』って気持ちが加速して
だから、絶対越えちゃいけない
お前は軽々とそれを乗り越えてきやがった。
俺がずっと言いたかったことも、あっさり言ってさ…。
ほんと、お前、ズルい…。
でも、そんなお前が、俺は好き…。
世界で1番幸せにする。
約束するから………俺と、付き合って…くれませんか…？
ちゃんと言って。
お前の口で。
ヤベ…。
今までほんとに付き合えると思ってなかったから、めちゃくちゃ嬉しい…。
抱きしめてもいい？
（抱きしめる）ギュー
あぁ…クソッ…。
今の自分が
メガネがないから、今お前がどんな顔してるのか見えない…。
もっと、近くで顔見てもいい？
こら、顔
まだ見えないんだから仕方ないだろ？
…まだ、見えない。
もうちょっと…。
やっと見えた…。
（触れるだけのリップ音）
すっごいかわいい顔してる…。
このまま食べちゃいたいくらい、かわいい。
メガネないのも、悪くないな。
こんなかわいいお前を間近で見られるんだから。
メガネの修理？
それはあとでいいよ。
今はお前との時間を大事にしたい。
もう少しだけ、このままでいたい。
……ダメ？
俺しか知らない、かわいいお前をもっと見せて。