【テレビの音声】
あれー?
テレビ見てるんだ。
『見たいのがあった』?
へぇー。
何が見たかったの?
心霊スポット特集?
これ、見ちゃダメでしょ。
『なんで?』って、当たり前でしょ。
君、おばけとか幽霊とか苦手じゃん。
これ見たら、絶対一人で寝れなくなると思うよ?
それでもいいの?
俺、知らないよ?
…『大丈夫』、ね。
その自信はどこから来るんだか…。
まぁ、俺も
隣で見ていい?
ありがと。
あぁ~、ここ有名なところだね。
たしか
……ねぇ、ほんとに大丈夫?
顔、ひきつってるよ?
怖くてたまらないんでしょ?
テレビ消そうか?
ダメなの…?
でもさ、いつも
ね?見るの、やめよ?
また『大丈夫』って…。
あのさ、大丈夫って言うなら、俺の腕から離れてくれない?
一人で見れるでしょ。
俺が隣に座ってから、ずっとくっついてるよね?
それ、怖いって言ってるのと同じことだからね。
分かってやってるの?
『うるさい』、ね…。
(嫌味っぽく)はいはい。
じゃぁ、俺、向こうに行ってるから。
どうぞ、ごゆっくり。
あっ。
言っとくけど、今日は俺に頼らないでね。
いくら怖くても、俺、一緒に寝てあげないし、トイレもついていかないから。
『ヤダ』?
なんで?
さっき『大丈夫』って言ってたじゃん。
大丈夫だから見てるんでしょ?
大人なんだから一人で寝られるし、トイレも行けるよね?
あ~ぁ…涙目になっちゃって…。
そんなに怖いなら見るのやめる?
ん。じゃぁ、消すよ?
【テレビを消す】
いつもいつも、怖くなるのに、どうして見ちゃうのかな?
…そこまで心霊系に興味あるなら、今度行ってみる?
心霊スポット。
(笑いながら)ごめん、ごめん。
そこまで怒らなくてもいいじゃん。
涙目で怒っても全然怖くないんだけどね。
じゃぁ、俺
おやすみ……って、何!?
いきなり腕引っ張らないでよ。
びっくりしたじゃん。
『一緒に寝て』?
…俺、さっき言ったよね。
『一緒に寝てあげない』って。
今夜は一人で寝なさい。
こらっ!
子供みたいに
一人で寝なさい。
いいね?
(溜息)はぁ…。
ほんとに、君ってずるいよね…。
俺が、それに弱いって分かっててやってるでしょ。
これからは俺の言うこと、ちゃんと聞く?
絶対だよ?
約束だからね?
……今日だけね。
一緒に寝てあげるの。
もし次、心霊番組見て、怖くなったとしても、一緒に寝てあげないからね。
さっきみたいにお願いしてもダメだよ。
分かった?
ん。約束ね。
ほら、おいで。
ギューしながら一緒に寝よ。
うぉっ!
勢いよく抱きついちゃって。
そんなに怖かったなら、見なきゃいいのに…。
まだ怖い?
映像が目に
…ふふ。かわいい。
仕方ないなぁ。
今夜は俺から離れるの禁止ね。
明日の朝まで、ずーっとくっついていること。
(耳元で)そしたら、怖くないでしょ?
ったく…。
ん?
もしかして、最初からこれが目的だったりする?
…それならそうと、最初から素直に言えばいいのに。
ほら、ちゃんと俺にくっついた?
電気消すよ。
【電気を消す音】
おやすみ。
いい夢見てね。