(遠くから走ってくる足音)
(彼女、手を掴まれる)
(息切れしながら)やっと捕まえた。
ヤダ。
離さない。
離したらまた逃げるじゃん。
(ワガママっ子っぽく)逃げてほしくないから離さない。
絶対逃げない?
ほんとに?
逃げようとしたら、俺の彼女になるってことでいい?
チッ……流れで『うん』って言うかと思ったのに…。
残念…。
(彼、彼女の手を離す)
で、なんで俺のこと避けてんの?
気のせいなわけない。
目が合ったらすぐ逸らすし、姿見かけたら逃げるみたいにUターンするし…。
……告白したの、迷惑だった?
迷惑じゃないなら、なんで避けてんの?
理由、教えろよ。
黙ってちゃ分かんない。
この際、はっきり言え。
フラれる覚悟もしてるから…。
俺……自分の気持ちを押し付けるような言い方した?
誰もいない時に告ったつもりだけど、誰かに聞かれてて冷やかされてたりする?
なんで教えてくんないの?
理由もナシに、これ以上避けられんのは、さすがにキツすぎるって…。
(無言の2人)
……分かった。
あの告白、なかったことにしよ?
(一人で納得するように)うん。
それがいい。
そうしよう。
そしたら、前みたいに普通にしてくれるよな。
(ヤケクソっぽく)今みたいなギクシャクした関係になるなら、告白なんかしなきゃよかった…。
ごめんな。
お前の気持ちとか全然考えずに勝手に突っ走って…。
じゃぁ、先帰るわ。
(彼、その場を離れようとする)
(彼女、彼の腕を引っ張って引き留める)
(彼、立ち止まり、振り返る)
…何?
もう話終わったじゃん。
ってか、あんまくっつかないでくんない?
お前への気持ちに諦めがつかなくなる…。
そりゃ……すぐに気持ちの整理ができないくらいにはお前のこと本気だったから…淡い期待をもたせるようなことはしてほしくない…。
えっ……いや、まぁ……たしかに、勝手に告白したのをなかったことにするのは悪かったけど……それは、お前との関係を思ってであって…。
(彼女、『好きかもしれない』と言う)
……はっ。
なんだよ。
『好きかもしれない』って。
自分の気持ちも分かんないわけ?
そこまでバカになったのかよ。
(彼女、彼を叩く)
痛いっ!痛いって!
叩くな!バカっ!
(彼、彼女を抱きしめる)
…お前さ、嘘つくの下手すぎ。
『好きかも』じゃなくて『好き』だろ?
見てれば分かる。
告白されて、俺のことちゃんと男として意識したら自分の気持ちに気付いて、どんな態度でいればいいか分かんなくて逃げてた……違う?
『違う』って言ってるわりに、お前の顔、恋する女の顔してる。
……なんで?
(耳元で)……俺のことが好きだから、だろ?
……自己チューで結構。
それくらい、お前が好きだもん。
ふふ。
恥ずかしがってる顔、かわいいな。
からかってない。
マジでそう思ったから言ってんの。
甘い言葉言うのは……多少恥ずかしいけど、そこまでじゃないかも。
今まで思ってても言えなかったからな。
気持ちバレたくなくて…。
おかげで、今はお前のことめいっぱいかわいがりたい気分。
『こんな俺、知らなかった』?
だろうな。
俺もお前のこと、まだ全然知らないし…。
子供の頃から一緒にいても知らないことなんて山程あるって、今日初めて知った。
な?
びっくりだよな?
…こんなに誰かのこと知りたいって思うのは、後にも先もお前だけだよ。
俺のこと、これからちょっとずつ知っていって?
俺もお前のこと、ちょっとずつ知ってくから。
……全部包み隠さず教えろよ?
(濃厚なキス)※キスしたままフェードアウトしてください。