(キーボードを叩く音)
(先輩、『お疲れ様』と声をかけてくる)
(キーボードを叩く手を止める)
(先輩に向かって、素っ気なく)あっ、先輩。
終わりっすか?
俺は……もうちょっとだけやってから帰ります。
今日のうちにキリのいいとこまで終わらせたいんで…。
了解っす。
電気、消して帰ります。
はい。
お疲れ様でした。
(再度キーボードを叩き始める)
(先輩、退室)
(フロアに彼女と2人きりになる)
ん?
素っ気ない?
誰が?
俺が?
……そう?
素っ気なくしてるつもりはないよ。
あくまで通常運転。
あぁー、無理。無理。
愛想振りまくとか、絶対無理。
必要だと思えないもん。
だって、そもそも愛想振りまいたところで、ここでしか会わない人たちだよ?
そんな人たちのご機嫌とりみたいな、めんどくさいことしたくない。
今までも、これからも、俺は今のままを貫く。
少しでも愛想よくしないとダメだって言うなら、ここ辞めればいいだけじゃん?
働ける会社はここだけじゃないし、したくないことをしなきゃいけない職場で働き続けるとか普通に拷問だし…。
(彼氏、自分の席を離れる → 彼女をバックハグする)
いいじゃん。
フロアには俺たちしかいないんだから、ちょっとくらいいちゃついてても怒られないよ。
それよりも、さっきデータ送ったから、確認しといて。
ん?
『先輩に言ってたことと違う』?
そりゃそうだよ。
「終わってる」って言ったら、『さっさと帰れ』って言われるに決まってる。
今日は君と一緒に帰りたいから、嘘ついた。
うん。
ほんとに完成してるよ。
嘘だと思うなら、データ今確認してみなよ。
(彼女、データを確認する)
ね?
できてたっしょ?
全然シゴデキじゃないよ。
コツさえ掴めば誰だってできるって。
…ちょっと待った。
自分を
そうすることで、自分の能力に制限かけてることになるから。
君は無能なんかじゃない。
ただ要領よくやるやり方を知らないだけ。
知ったら、俺みたいにできるようになるよ。
…教えてほしい?
いいよ。
また今度、時間がある時にね。
できないからって、怒ったりしないよ。
できるまで、付きっきりでじっくり教えてあげる。
ってかさ、あとどれくらいかかりそう?
(彼女、状況説明する)
ふぅーん。
それで?
(ちょっとオコで)はぁ!?
一人で帰るのとか、ヤダ。
一緒に帰る。
絶対に。
じゃぁ、ちょっと席変わって。
パパッと終わらせる。
ほんとにパパッとだって。
これくらいならすぐだよ。
いい?
見てて。
(キーボードを叩く音とマウスのクリック音、スタート)※適当にお願いします。
まずは、ここんとこをこうして…。
で、次はここをこう…。
で、仕上げにこうすれば…。
(キーボードを叩く音とマウスのクリック音、終わり)
ほら、できた。
じゃぁ、全部終わったことだし、データ保存してパソコンの電源落として、早く帰ろ。
で、家に着いたら、仕事手伝ったご褒美貰わないと…。
当たり前じゃん。
見返りナシでやるなんて、あり得ないって。
(耳元で)帰ったら、日付変わるまでベッドで残業に付き合ってね。