(ゲームをしている2人)
あ゛ぁ゛ー!
また負けたっ!
マジ強すぎ…。
少しくらい手加減してくれてもよくない?
(やさぐれた感じの溜息)はぁ…。
一旦ゲームやめて休憩しよ。
誰かさんが全力で叩きのめしてくれたから疲れちゃった。
飲み物取ってくるけど、同じものでいい?
ん。
了解。
(小声でボソッと)……あっ……そういえば…。
ねぇ。
お互い大人になったことだし、君の血ちょうだい?
いやいや。
待って。待って。
子供の頃、約束したじゃん。
大人になったら君の血くれるって。
うぅん。
絶対約束した。
うーわ…まさか約束自体忘れ去られるなんて…。
このためだけに大人になるの、楽しみにしてたのに…。
こんなの、ひどすぎる…。
えっ!
いいの!?
ほんとに!?
やったー!
ありがと。
気が変わらないうちに、ナイフ持ってこなきゃね。
えっと……ナイフ、ナイフ…。
確か、昨日果物持ってきたついでにこの辺りに置いといたはず…。
(彼、彼女の元から離れる)
(彼、ナイフを探している)※以下、探しているように。
ん?
首筋から?
しない。しない。
今回は指をちょっと切って舐めるだけ。
言っとくけど、首筋からって半端ないくらい痛いよ?
この牙をブスッと刺すから、だいたいの子が痛みで気絶するし…。
そ。
マンガとかアニメとかで首筋に牙立てられて血吸われてうっとりしてる様子に描かれてるのは、嘘だよ。
アレ、信じてたの!?
…まさか、身近に信じてる人がいるとは思わなかった…。
別に俺が言ったこと信じなくていいよ。
ほんとか嘘かは、自分がされてみれば分かることなんだし…。
俺が人間の女の子だったら、絶対拒否るけど…。
はぁ!?
何勘違いしてるのか知らないけど、生きた人間から吸血したことないからね?
今まで、支給用の血液しか口にしてない。
さっきの話は、聞いた話だから知ってたの。
『なんで?』って言われても、特別な理由とかないよ。
「ただ吸いたくなかった」ってだけ。
女の子に興味ないわけではないけど、わざわざ痛い思いさせてまで自分の渇きを癒したいかって言われたら、答えはNo。
支給された血液があるんだし、それで充分。
……あった!
(彼、ナイフを手に戻ってくる)
手、貸して。
じゃぁ、今から指先をピッて切るね。
覚悟はいい?
いくよ?
(彼、彼女の指を切る)
(彼、出てきた彼女の血を舐める)
……おいしい。
支給用とは比べ物になんないくらいおいしい…。
ヤバイ……もっと欲しい…。
(彼、彼女の指に吸い付いて離れない)※以下、最後まで指を咥えたまま
(指を舐めながら)ごめん。
おいしすぎて、止まんなくなっちゃった。
血止まってないし、止まるまでこのままでもいい?
垂れ流すのも、もったいないじゃん?
それに、俺にこうやって指舐められてるのも悪くないとか思ってるんじゃない?
顔に書いてるよ。
ふふ。
拒否り方が必死すぎて、逆に怪しくなってる。
あのさ、たまにでいいからさ、こうやって君の血舐めさせてよ。
生きた人間の血液と支給用の血液の味が違いすぎて、この先支給用だけじゃ満足できそうにないんだもん。
別に拒否ってもいいけど、君ではない誰かが犠牲になるだけ。
それでもいいの?
うん。
脅してる。
だって、脅してでも、君の血が欲しいんだもん。
君の血も、君のことも大好きだから。
はい、はい。
今のは、あとでちゃんと説明してあげる。
説明してあげるから……今は黙って舐められてて。