恋人とケンカしても感情的にならずに話をする彼氏

(B、自室にこもっている)

(A、Bの部屋のドアをノックする)

A:…入るぞ?

(部屋に入ってくる)

(ベッドで布団にくるまっているBに近づく)

A:なぁ。
  まだ怒ってんの?

(A、布団にくるまったままのBを布団ごとバックハグする)

A:ごめんって…。
  そろそろ機嫌直してくれよ。

B:無理。
  結局、君も女の子の方がいいんでしょ?

  僕のこと好きって言ってても、陰で女の子に体ベタベタ触られて、嬉しそうにしちゃって…。

A:違う!
  俺にはお前だけだって!
  あの女とはなんの関係もない。

B:…どうだか。

A:お前が見たのは最初のくっつかれてたとこで、そのあと、やめろっつって腕振りほどいてる。

B:(忌々しそうに)…そんなの、どうとでも言える…。

  ってか、僕にくっつくの、やめて!
  これ以上近づかないで!
  今すぐ部屋から出てって!

A:それ、本気で言ってる?

B:本気じゃなかったら言うわけないじゃん!

A:ふぅーん。
  そっか…。

  ごめんな。
  傷つけて…。

  でも、ほんとに、俺にはお前だけだから。

B:あの女の子にも同じようなこと言ってんでしょ!

  ……うぅん。違う。
  あの子だけじゃない。
  かわいい女の子、皆に言ってるんだ!

A:言ってねーよ。
  俺が「身も心も欲しい」って思うのは、お前だけ。

B:信じられない!

  ……嘘()きなんか、嫌い…。
  大っ嫌い!!

A:いいよ。
  俺のこと嫌いでも…。

  その代わり、お前のこと好きでいさせて?

B:意味わかんないから、ヤダ!

A:『ヤダ』はヤダ。
  だって、こんなにお前のこと、好きなのに…。

  …好き。

  大好き。

  この世の誰よりも好き。

  全世界、敵に回しても好き。

  宇宙で一番愛してる。

B:やめて。
  そんな軽い言葉、聞きたくない。

A:やめない。
  お前が布団から出てきてくれるまで、ずっと続ける。

B:あ゛ぁ゛ー、もう!

(B、布団から出てくる)

B:ほんと自分勝手で……ムカつく!

(BからAに濃厚なキス)

B:(信じたいけど信じられないみたいな感じで)こんなキスするの、僕だけ?

A:あぁ。

B:愛してるのも、僕だけ?

A:もちろん。

(BからAに抱きつく)

B:僕が目撃したあと、ほんとのほんとに、あの子とは何もなかったの?

A:ほんとのほんとに、何もなかった。

  今まで接点なかったのに、連絡先教えろだの、仕事終わりに飲みに行こうだの、急に俺の周りをうろついてきてウザくてさ…。
  まともに話すのもめんどくさくて、適当に相手してたら、調子に乗りやがって…。
  普段外でキレたりしないんだけど、あまりのしつこさに、あの時ばかりは腕振りほどいて、「てめぇにはこれっぽっちの興味もねーよ」ってガチギレした。

  そしたら、パワハラとかなんか適当な理由で、会社の相談窓口?みたいなとこに訴えられた。

B:えっ!?
  大丈夫だったの?

A:物的証拠もないし、日頃の行いがいいしで、お(とが)めなし。

  当たり前っちゃ当たり前なんだけどな。

B:よかったぁ…。

A:とはいえ、お前を不安にさせたことに変わりないんだし…。
  めんどくさがらずに、きっちり話つけとくべきだった。

  ほんとに、ごめん。

B:うぅん。
  僕もちゃんと話も聞かずに勝手に嫉妬して、()ねて…。

  しまいには、君に『大っ嫌い!!』なんて、ひどいこと言って傷つけた…。

  僕の方こそ、ごめんなさい…。

A:いいんだよ。
  あんなにも感情を出してくれるってことは、それだけ好きでいてくれてる証拠だろ?

B:……それは、そうだけど…。

A:なら、いいよ。
  お前が俺のこと好きでいてくれさえすれば。

B:……甘すぎない?

A:何が?

B:傷つけたのに、怒んないの?

A:怒んない。
  先に傷つけたの、俺だし。

B:でも…。

(触れるだけのキス)

A:お互い『ごめんなさい』したし、この話はこれでおしまい。
  いいな?

B:うん。

A:よしっ!
  じゃぁ、次の休み、出かけるか。

B:どこか行きたいところ、あるの?

A:……あぁー……うん……その……指輪を買いに、な…。

B:ゆびわ…?

A:そ。
  指輪。
  左手薬指にするペアリング。

  「 俺には愛するヤツがいるんだぞ!」って周りにアピールできるだろ?
  そしたら、ウザい虫どもが寄ってくることもなくなるし、お前にいらぬ心配をかけることもない。

  ただ、ペアリングだから、(目敏めざと)いヤツに見つかったら、()やかされる心配があるのが問題ってくらいで…。

B:それくらいは全然いいけど……君はいいの?
  ()やかされるとか、嫌いじゃん…。
  付き合ってるのも秘密にしてるのに…。

A:嫌いだけど、お前が悲しむことと比べたら、なんてことはない。

  ただ……指輪を付けたら、死ぬまで一生離してやれなくなると思う。

  ……それでも俺のそばにいてくれますか?

B:……はいっ!!

A:…ありがと。

  愛してる。

B:僕も。

(濃厚なキス)※ キスしたままフェードアウトしてください。