無愛想でぶっきらぼうなのに、優しさで溢れているワニ系な神様

(チリーンみたいな鈴の音)

……転生希望者?

(スマホの操作をしながら)連絡……きてねぇし…。

(舌打ち)チッ
この程度の仕事もできねぇのかよ…。
(溜息)はぁ…。

わけ分かんねぇと思うから、とりあえず簡単に現状の説明しとく。
ここは死後の世界で、俺はこの世界の神様。
で、ついさっき、お前は死んだ。

(通知音)

やっと来た…。
どれどれ…。

ふぅーん。
なるほどね。

お前さ、何で死んだか理解してる?

(首を横に振る彼女)

働きすぎ……いわゆる、過労ってヤツ。
ここんとこ過労で死ぬヤツなんていなかったのに……無茶した理由、なんかあんの?

『失恋を忘れるため』ねぇ…。

もしかして、浮気された的な…?

マジかよ…。
まさかとは思うけど、本番中を目撃したなんてこと…。

……最悪じゃん…。

(ボソッと)……それで無茶するとか、クソつまんねぇの…。

…今の聞こえた?

だって、そうだろ。
『ただひたすらに仕事してないと貴方のことが忘れられないんです!』って言ってるようなもんじゃん。
別れた後、お前のことを元彼がどう思ってるか知らないけど、『そんなに俺のことが好きだったんだな』って少しでも優越感に浸らせることにはなる。

それって、普通に悔しくね?
勝手に別れ切り出して、人の気持ちグチャグチャに引っ掻き回しておいてさ…。
クソみたいなバカのせいで、まだ生きられたはずの人生パァにしたかと思うと後悔しかねぇだろ。

……やられたら倍にしてやり返す。
(イタズラっ子っぽく)っつーことで、お前の元彼を()らしめてやろーぜ。

どんなことにするかは、お前次第。
何もしないってのもアリ。

どう?
やる気、ある?

(頷く彼女)

そうこなくっちゃ!
なんか希望は?
特になきゃ、俺が勝手に決めるけど…。

ないのかよ…。
話に食い気味だったくせに、人任せとか…。

ん゛ー……そうだなぁ…。
いざ本番!って時に、急にムスコが萎える呪いとか…?
さっきまでギンギンだったのに、急にシナシナになったらさすがに自信なくすだろ?
その場の空気も悪くなるし…。

よしっ!
決まりっ!
そこで見守ってな。

これを、こうして……あ゛っ!ヤベっ!

(元彼に呪い付与)

……まぁ、いっか…。

(言い訳っぽく)あ゛ぁ゛ー……お前の元彼に、急にムスコが萎える呪いをかけるって話だったじゃん?
ちょいと気合い入れすぎて、一生勃たない呪いになっちまった…。
どんなに優秀な医者ですら、絶対に治せねぇ。

マジ!マジ!
元彼のムスコ、もう一生使い物になんねぇよ。

あっ!ほら!
見てみ?
これからちょうど本番が始まる。

(彼女と状況を見始める)

…元彼と一緒にいるのって浮気相手の女?

へぇー。
(ボソッと)趣味悪…。

ここから状況が変わってくるから、よーく見てな。

さっきまでの自信はどこへやら…。
急に萎えたから、慌ててる。

うーわ……必死にシコって……だっせぇ…。
どんなにシコったって無駄なのに…。

あーぁ……捨てられてやんの。

ざまぁってヤツだな。

……少しはスッキリした?

なら、よかった。

(彼女がお礼を言ってくる)

(動揺して)…えっ……いや……別に……礼を言われたくてやったわけじゃねぇから…。
転生するのに未練があって、どっかのタイミングで思い出したりしたらやっぱイヤだろうし…。
せっかく転生するなら、その辺きっちり片付けたいだろうなと思っただけ…。

結果的にお前の気が晴れたなら、それでいいよ。

(無理矢理話を変える感じで)で、次はお前の番。
転生するにあたって、注意事項がいくつかあるから、よーく聞け?
一度しか言わねぇからな?

ひとつ、転生先はお前の元いた世界とは違う世界で、赤ん坊から人生やり直し。

ふたつ、今までの記憶は持って行くことが可能。
これに関してはお前の意志が尊重されるから、持って行かねぇこともできる。

みっつ、好きな加護を与えられる。
加護って分かるか?
お前の元の世界のラノベで言うところの、スキルみたいなもん。
ただし、一つだけ。

当たり前だろ。
いくつも付けられるほど、神様は優しくねぇし、暇じゃねぇの。

以上。
バカでも分かるように言ったけど、分かんねぇことは?

ん。
じゃぁ、お前の希望の加護を付けてやる。
なんでも言え。

おう。
多少の無茶くらい聞いてやる。
神様、舐めんなよ?

…了解。
じゃぁ、そのまま動くなよ?
ちょっとでも動いたら、お前の元彼みたいに大変なことになるかもしんねぇからな?

(彼女に加護をつける)

ほい。
おしまい。

大丈夫だって。
大変なことにはなってねぇよ。

(ボソッと)元彼の時は、個人的にムカついてただけで…。

(咳払い)ん゛ん゛っ!
別に、何でもねぇ。

転生の準備も終わったし、そろそろ転生すんぞ?

不安そうな顔すんなよ。
次の人生では絶対うまくいくって。

どうしても不安なら、おまじないしてやろーか?

今回だけの特別大サービスなんだから、俺とお前の秘密な?

……次の人生は、愛で溢れた人生になりますように。

(おでこに触れるだけのキス)※省略可

じゃぁ……元気でな…。

(彼女、転生される)