おはよ…。
(あくび)ふぁ…。
ん゛ん゛…。
眠い…。
(クンクンする)
いい匂い…。
朝ご飯、何?
俺の好きな物ばっかじゃん。
いつも、おいしいご飯作ってくれてありがと。
(触れるだけのリップ音)
(彼女を抱きしめる)
あれ?
ねぇ、体熱くない?
どことなく顔色悪いような気がするし…。
おでこ、触るよ?
うわっ…。
熱あるじゃん。
朝ご飯はいいから、ベッド行こ?
このままだと、もっと悪くなっちゃうよ?
俺にはいつも『無理しちゃダメでしょ!』って怒るくせに、なんで自分は無理しちゃうの?
俺に無理するなって言うなら、君自身も無理しちゃダメじゃない?
俺の言うこと聞いて。
お願いだから。
倒れて、頭打ったら大変だから言ってるの。
……ねぇ、俺の話、聞いてる?
ボォーっとしてて、全然聞いてなかったでしょ?
目の焦点合ってないよ。
どんなに『大丈夫』って言っても、嘘にしか聞こえない。
少しくらい甘えてって、いつも言ってるよね?
つらい時でさえ、こんなに強がっちゃうくらいに、俺って頼りない存在?
今だけでいいから、俺に甘えてよ。
ね?
抱っこ?
いいよ。
おっと…危な…。
足元フラフラじゃん…。
立ってるのも、やっとだったの?
気付かなくて、ごめんね。
いっぱいがんばって、えらいね。
もうがんばらなくていいよ。
俺の首に腕回して。
ん、そう。
上手、上手。
お姫様抱っこでベッドまで連れてってあげる。
首に回してる腕、離しちゃダメだよ。
そのまましっかりくっついててね。
(リビングからベッドルームに移動)
よいしょ…っと…。
お布団に入って。
今、どんな感じ?
頭がボォーっとする以外で。
『分かんない』?
えっ!?
なんで泣いてるの!?
ちょっ…待って…。
泣かないで。
(彼女を抱きしめる)
(背中トントンしながら)落ち着くまでギューってしてるから。大丈夫だよ。
(独り言っぽく)最近忙しくて、いろいろ溜め込みすぎたのかな…?
ん?
どうしたの?
何か言いたいことあるなら、言っていいよ。
(相槌数回打つ)
家事なら、俺に任せて。
ちゃんとやっとくから。
卵も割れるようになったし、掃除機も
もう昔の俺とは違うんだよ。
君が知ってる俺って、同棲始めた頃でしょ?
あの頃って、料理全然できなかったよね。
まともに卵も割ることすらできなくてさ…。
今思い出しても、あれは
そんな俺が今では片手で卵割れるようになったんだよ。
君がいない間にちょっとずつ練習してたら、できるようになったんだ。
すごくない?
ほんとにできるって。
信じてないね?
なら、今度見せてあげる。
びっくりして、腰抜かしても知らないから。
掃除は、今も家事の中では1番嫌いかも…。
だって、めんどくさいじゃん。
綺麗にするのは大事だと思うけど、物を動かして掃除機かけなきゃいけないのがね…。
どうしても、目につくところだけ綺麗にしてればいいじゃん、って思っちゃう…。
でも、ちゃんとやってるよ!
元気になったら、確認してくれてもいいよ。
洗濯は……1番君に迷惑をかけたよね。
床一面、泡だらけにして…。
あの時の掃除は、ほんとに大変だったなぁ…。
洗剤を
たくさん入れたら綺麗になるだろうって思ってたから。
あれ以来、ちゃんと
その証拠に、床を泡だらけにしてないでしょ?
他にもちょっとずつできることは増えたけど、君に比べたら、まだまだなのは分かってる。
だから、俺決めたんだ。
ひとつ、無理して背伸びしない。
ふたつ、自分にできることだけ精一杯やる。
みっつ、できないことは君に任せる。
コレ、今までの失敗から学んだこと。
ずっと『君に迷惑かけないように』って、できないことも無理してやってた。
でも、それが結局君に迷惑かけることになるって気付いたから。
やれないことを無理してやって失敗するより、やれることを精一杯やっておく方が正解かなって。
だから、お互いやれることを精一杯やろ?
家のことは俺に任せて。
君はちゃんと休んで体を治すことに専念して。
ね?
うん。
絶対無理しない。
…約束。
安心したら眠くなったかな?
目がトロンってしてる。
お布団に入って。
寝付くまでそばにいるよ。
いっぱいお話して疲れさせちゃってごめんね。
ゆっくり休んで早く元気になって。
(触れるだけのリップ音)
おやすみ。