(草むらが揺れる音)
(何かが飛び出してくる)
(赤ずきんの目を隠す)
犬系:だーれだっ!
ふふ。
バレてたか。
どうしてこんなとこにいるの?
今日は遊ぶ約束してないよね?
ふぅーん。
用事…。
だとしても、女の子が一人で歩いてるのは危ないよ。
そっちにも連絡いってない?
最近野良狼が多いって…。
実際人間が襲われる被害が出てるし…。
(赤ずきん、「それでも行く」ときかない)
犬系:ダメ!ダメ!
どこに行くか知らないけど、今日は戻った方がいいよ。
村の近くまで送ってく。
用事なんて、また今度でいいじゃん。
今はほんとに危ないの。
ね?
お願い。
俺の知らないとこで赤ずきんに傷ついてほしくないから帰ろうよ…。
(草むらが揺れる音)
犬系:俺の後ろに隠れて。
もしかしたら、野良狼かも…。
大丈夫。
命にかえても、君を守るよ。
(猫系が現れる)
猫系:あっ、赤ずきん見つけた。
犬系:(安堵して)なんだ…お前かよ…。
猫系:『なんだ』とはなんだよ。
ってか、お前の後ろに隠してる人間、こっちに渡してくんない?
犬系:なんで?
猫系:俺と約束してるから。
おいで、赤ずきん。
迎えにきた。
『なんで?』もなにも、待ち合わせの時間過ぎてる。
いつも5分前行動が当たり前な赤ずきんが遅刻なんてあり得ないじゃん?
トラブルにでも巻き込まれたかと心配になって探しに来てみたら…。
…俺との約束ほったらかしにして、こんなとこで浮気?
犬系:そ。
実は、俺たちラブラブなんだ。
猫系:お前には聞いてない。
ってか、お前と付き合うとかないから。
犬系:その根拠は?
猫系:赤ずきんの性格を理解してれば分かる。
もし付き合ってたら、俺とのデートの約束なんてそもそもしないはず。
ゆえに、赤ずきんは誰とも付き合ってない。
(小声で)……今はまだ。
(猫系、犬系の後ろから赤ずきんを引っ張り出す)
猫系:じゃぁ、そういうことで。
犬系:待て!待て!待て!
赤ずきんをどこに連れて行くつもりだよ?
猫系:そんなの、お前には関係ない。
俺たちだけの秘密。
犬系:だったら、赤ずきんは渡さない。
(犬系、猫系の元から赤ずきんの手を引き、抱きとめる)
犬系:このまま村まで送ってく。
かわいい赤ずきんが野蛮な狼に食べられる前にな。
猫系:野蛮なのはどっちだよ。
下心丸出しの匂いプンプンさせといて、よく言う…。
赤ずきん。
そっちは危ないからこっちにおいで。
(猫系、赤ずきんの手を無理矢理引いて自分の元に引き寄せる)
(猫系、赤ずきんの匂いを嗅ぐ)
猫系:うーわ……最悪…。
ねぇ。
このあと、俺の家に一旦寄って、お風呂に入ってって?
犬系:お風呂!?
はぁ……ヤダ、ヤダ…。
下心丸出しなのはどっちなんだか…。
猫系:なんかほざいてるヤツがいるけど、気にしないで。
今のは、赤ずきんの体にあいつの匂いがついてるから言っただけ。
うん。
気持ち悪くなるくらいすごい匂いついてる。
だから、お風呂に入ってって言っただけ。
俺はあいつみたいに下心はないから安心して。
犬系:(わざとっぽく)あれー?
おかしいなぁー?
マーキングなんてしてないんだけど。
猫系:はぐらかす気かよ。
こんなにもあからさまにマーキングしておいて…。
犬系:自分以外のオスに奪われないために好きな子にマーキングするのは当然だろ。
猫系:まだ番になってない女の子にマーキングするとか…。
マナーがなってない。
犬系:番になればいいだけの話。
まぁ、変な心配なんかしなくても、遠くない未来に赤ずきんと番になる。
絶対にな。
ってか、お前こそ下心ないとか言って安心させてパクッと食べるつもりだろ?
猫系:お前と一緒にすんな。
犬系:やんのか?ゴラァ。
猫系:やってやろーじゃねーか。
(赤ずきん、2匹を仲裁する)
(ハッとする2人)
猫系:……ごめん。
赤ずきんからあいつの匂いがして頭に血がのぼった。
(猫系、赤ずきんをそっと抱きしめる)
猫系:本気でなんてやんない。
赤ずきんの目の前では絶対やんない。
怖い思いさせたくないもん。
…今のも怖かったでしょ?
だよね。
ほんとにごめん。
もうしないから、安心して。
犬系:はいはい。
赤ずきんのこと離して。
(犬系、猫系から赤ずきんを奪い、抱きしめる)
犬系:ごめんね。
バカの挑発に乗っちゃって…。
猫系:お前の方がバカだろ。
犬系:(猫系を無視して)怖い思いさせて、ほんとにごめんね。
バカがうつる前に、移動しよっか。
猫系:おい。
ふざけんな。
赤ずきん、返せよ。
犬系:ヤダね。
お前みたいなムッツリスケベなヤツに赤ずきんを預けるなんて危なすぎる。
猫系:……もういい。
赤ずきん。
今から大事なことを言うから、よーく聞いて。
犬系:聞かないで、赤ずきん。
(犬系、騒いで妨害しようとする)
猫系:あのね、俺、赤ずきんのことが好き。
初めて会った時から、ずっと。
基本、俺って素直になれなくて、ツンツンしてるじゃん?
それなのに、赤ずきんはとっても優しくしてくれた。
君にとってはなんでもないことでも、俺にとっては特別なことで…。
…好きにならずにはいられなかった。
できれば、この先もずっと一緒にいたい。
……赤ずきんの残りの人生、俺にくれない?
犬系:ろくでもないことを…。
猫系:こんなの、言ったもん勝ちだろ。
言ってなかったお前の負け。
赤ずきんのこと、離して。
で、返して。
犬系:ヤダね。
ねぇ、赤ずきん。
俺からも話があるんだ。
猫系:おい、待てよっ!
犬系:(猫系の言葉を振り切って)俺もね、赤ずきんが好き。
今まで言わなかったのは、関係を壊したくなかったから。
このまま友達でいられればそれでいいと思ってた。
なのに、俺以外の狼と知り合いだったなんて…。
正直焦ったし、怖かった…。
赤ずきんが俺以外のオスに取られるって。
…だから、もう自分の気持ちに蓋をするのはやめる。
俺は赤ずきんがほしい。
ほかのメスじゃなく、赤ずきんがほしい。
一人の女の子として。
俺のパートナーになってくれない?
猫系:勝手に盛り上がってんなよ。
犬系:お互い様だろ。
猫系:人の告白に便乗してきやがって…。
犬系:たまたまいいタイミングだっただけだし。
便乗したわけじゃない。
猫系:せっかくのいい雰囲気、ぶち壊されたし…。
犬系:お前に赤ずきんが取られるくらいなら、なんだってするさ。
猫系:そんな考えしてると、モテないぞ。
犬系:赤ずきんだけにモテれば構わない。
猫系:選ばれるか分かんないのに?
犬系:選ばれるのは俺だ。
猫系:それは俺のセリフ。
犬系:埒が明かない…。
猫系:だったら、聞いてみるか?
赤ずきん本人に。
(2人、赤ずきんに向き直る)
犬系:いきなりこんなことになって戸惑ってるのは分かってる。
けど、俺たちも引くに引けないんだ。
猫系:愛した女を
これは狼の習性だから、どうしても赤ずきんを諦められない。
犬系:だから、赤ずきんが決めてほしい。
猫系:そうすれば、きっとこの気持ちにも諦めがつくと思うから…。
犬系:(同時に)俺とこいつ、どっちを選ぶ?
猫系:(同時に)俺とこいつ、どっちを選ぶ?