(彼女、鎖に繋がれて監禁されている)
(ドアの開閉音)
(彼、部屋に入ってくる)
おはよ。
よく眠れた?
ふふ。
朝から大声出しちゃって…。
よく眠れて元気なようで、なにより。
(彼女、手枷足枷を外せと要求する)
それなら、それ相応のお願いの仕方でお願いしてくれなきゃ外してあげない。
(彼女、再度外してほしいと告げる)
(思わせぶりな感じで)んんー……どうしよっかなぁ?
……いいよ。
外してあげる。
うん。
ほんとにいいよ。
鍵持ってるから、今すぐ外してあげる。
手、出して。
(彼、鍵を解錠して手枷を外す)
これ、
自分で外していいよ。
あと、服と荷物は……ここに…。
(彼女、足枷の鍵を外す)
(彼、クローゼットから彼女の服を取り出す)
はい、ここに来た時の服と荷物。
(彼女、すぐ着替え始めようとする)
(溜息)はぁ…。
やっぱり着替えちゃうんだ…。
できれば、その服着てほしくなくてさ…。
君はそういう服が好きなんだろうけど、正直かわいくない。
もさっとしてて、君の魅力を大幅に下げてる。
それに比べて、僕が用意した、今着てる服の方はかわいいし、君の魅力を倍増させてる。
えぇー!?
分かんないの!?
…悪いことは言わない。
これからお洒落を研究した方がいいと思うよ?
長い人生で恥をかかないためにも…。
って、まぁ……余計なお世話なのは分かってる。
どんな服を選ぼうが、君の勝手。
今の僕の意見は、第三者からのただの戯言だと聞き流して。
えっと……鍵外してあげたし、服も荷物も渡したし、あとは……何もないかな…。
くれぐれも気を付けて逃げるんだよ?
知らない人には近づいたり、ついて行ったりしちゃダメだよ?
僕に攫われた時みたいに。
ん?何?
逃げる気満々なのは最初から気付いてたよ。
だから、『
ほら。
着替えて、さっさと逃げなよ。
怒るわけないじゃん。
君がやりたいことをやるのが一番だもん。
後悔とかしてほしくないし…。
ただ、僕からひとつだけ言いたいのは、ここにいた方が安全だよってことだけ。
だって、ここがどこか分かる?
分かんないよね?
攫われた時、目隠しとヘッドホンされて、外の情報が全くない状態で連れてこられたんだもんね?
……ここから出たら、命の危険があるかもよ?
野犬とか熊とか、野生の獣に襲われるかもしれない。
そうじゃなくても、水も食料もない状態での移動となれば、人里に下りる前に命が尽きるかもしれない。
だったら、ここにいた方がよくない?
僕が身の回りの世話を焼いてあげる以外は普通に生活ができる。
自分の命と自由を天秤にかけて、よーく考えてごらん?
頭のいい君なら、分かるはずだよ?
それでも逃げるなら、逃げたらいいよ。
ここら辺の土地勘はあるから、君がどこに逃げたって見つけ出してあげる。
で、ここに連れ戻ってきて、快楽の海に叩き落とす。
『気持ちいいのはヤダ!』『気持ちいいの、怖い!』って泣き叫んでた、あの頃みたいに…。
……どうする?
逃げる?逃げない?
(彼女、服と荷物をその場に起き、部屋の隅に移動する)
(彼、彼女のあとについて移動する)
あーぁ……ガタガタ震えちゃって…。
(楽しそうに)あの頃のこと、思い出しちゃった感じ?
そうだよね。
怖いよね。
しばらく現実の区別すらつかないくらいだったもんね。
……両手両足出して。
これ、付けなきゃ。
(彼、彼女の両手両足に手枷足枷を付ける)
(彼、彼女をそっと抱きしめる)※以下、抱きしめたまま
……ここに残るって君が選んだんだ。
今後一切、
もし言ったら、どうなるか……分かるよね?
ふふ。
これからずっとずっと一緒だよ。
愛してる。