雨で気付くそれぞれの思い

(雨の中走る2人)

(息切れしながら)雨粒、細かいからワンチャン濡れずに帰れるかと思ったけど、無理だったな。

あーぁ……パンツまでびしょびしょ…。
気持ち悪いし、冷たいし……最悪…。

(彼女、いちいち報告しなくていいと怒る)

あ?
別に何言っててもいいだろ?
ただのでっかい独り言なんだし、聞き流しゃいいじゃん。

(嫌味っぽく)はいはい。
無神経な人間ですみませんでしたー。

にしても、やみそうにないな。
この雨。

(彼、カバンの中をあさる)

(ボソッと)……あった。

(彼、幼馴染にタオルを渡す)

ん。
タオル……使えよ。
予備で持ってただけで、使ってないやつ。

俺のことは気にすんな。
パンツまで濡れてるから拭いたって意味ないし…。

その代わり、お前はちゃんと拭いとけ。
子供の頃、雨にちょっと濡れただけでも風邪ひいてたじゃん。

大人とか子供とか関係ないんだよ。
体質なんてそう簡単に変わるもんでもあるまいし…。

(彼、自分の上着を脱ぐ)

あと、コレも…。

(彼、幼馴染に上着を着せる)

びしょびしょで悪いけど、ないよりマシだろ。

脱ぐな!脱ぐな!
着なくていいから、肩にかけとけ。

(ごにょごにょな感じで)……全部透けて見えてる…。

(幼馴染、彼をバシバシ叩く)

おい、やめろ!
普通に痛いって!

(彼、幼馴染を制する)

俺が悪いんじゃないだろーが!
お洒落ばっか重視して、ペラペラな服着てるお前が悪い!

夏だからって、こんな薄着してたら、いつか変なヤツに襲われるんだからな。

ないとは言い切れないだろ?
(たで)食う虫も好き好きって言うし…。

(幼馴染、再度彼をバシバシ叩く)

ちょっ……マジで痛いっつーの!
叩いてくんな!

……(舌打ち)チッ
(独り言っぽく)まだいる…。

あそこ、見てみ?
変なヤツがこっち見てる。

アイツ、お前の知り合い?

ふぅーん。
知らないヤツなんだ。

……アイツ、ずっとつけてきてた。

嘘じゃない。
ほんと。

あんなに下手くそな尾行されて、気付いてなかったのかよ…。

(呆れて)おめでたいヤツ…。
たぶん、お前のこと狙ってるんだと思う。

いいや。
考えすぎとかじゃない。
アイツの視線、ねちっこくて、独占欲にまみれてて男の俺でもキモく感じる。

ってか、このままだと家までついて来られそうだな…。

ちょっとそのままでいろよ?

(彼、ストーカーから見るとキスしているような立ち位置に移動)

(ストーカー、その場を立ち去る)

……行ったな。

ん?
アイツからの位置だと俺らがキスしてるように見えて、キレて帰ったんだろ。

『逆恨み』?
できるもんならやってみろ。
返り討ちにしてやる。

(ドヤァな感じで)こう見えて、ケンカは強いんで。

……って、なんて顔してんだよ。
ただちょっと顔近づけただけなのに。

(茶化すように)もしかしなくても、俺のこと男として意識しちゃったとか?

……やっとかよ…。

そ。
お前のこと、ずっと好きだった。

いつからか分かんないけど、気付いた時にはお前のこと女として見てた。
だから、彼女も作らなかった。
『彼女いない歴=年齢』って、お前は散々バカにしてたけどな。

俺の隣はお前以外考えられない。

冗談でこんなこと言うかよ。
本気だっつーの。

いきなりでわけ分かんないと思うし、返事はまた今度でいい。

今まで何年も待ったんだ。
あと少しくらい余裕で待てる。

(雨が弱まってくる)

おっ、雨止みだした。

(彼、幼馴染に手を差し出す)

ん。
手……繋いで帰ろ。

『イヤ』じゃないっての。

(彼、幼馴染の手を無理矢理触れる)

ほらー。
やっぱり冷え切ってんじゃん。
俺の体温、分けてやる。

グイグイいくのは当然。
もっと俺のことを意識してもらわないと…。

(耳元で)これから手加減ナシでどんどん攻めてくつもりだから、さっさと降参して俺の腕の中に来いよ?