弟の彼女を巡っての兄弟げんか

(彼の実家でレポートをしている弟(彼氏)と見守る彼女)

(ノートパソコンのキーボードを打つ音)

弟:……これで完成!
  保存して……っと…。

  はぁ…。
  終わったぁ…。

  (背伸びする感じで)んんーっ!
  一旦休憩。

  もう1つレポートあるけど、すぐやる元気ないや…。

  いつもなら、もっと早く完成させられるのに、今回のレポート難しすぎ…。
  ほんと、間に合ってよかったぁ…。

  締切ギリギリになっちゃったのは、仕方ないの。
  バイトが忙しかったんだもん。

  ここんとこ、体調不良の子が続出しちゃってさ…。
  残りの元気なメンバーだけじゃ人手不足だったし…。
  困った時は助け合わないと、ね?

  (独り言っぽく)頭フル回転させたから、甘い物欲しくなっちゃったなぁ…。
  たしか、母さんが昨日お菓子買ってきてたような…。

  ちょっと台所に行ってくるね。
  お菓子持ってくる。

  飲み物もついでに持ってくるけど、さっきと同じでいい?

  ん。
  了解。

  じゃぁ、ちょっと待っててね。

(弟、部屋から出ていく)

(ちょっとだけ間を空ける)

(兄、ノックもなしに弟の部屋を開ける)

兄:なぁ。
  俺のマンガ、また勝手に持ってっただろ。

  ……あっ……こんにちは。

  アイツ……弟、知らない?
  どっか行っちゃった?

  台所…?

  一人で部屋に残されて寂しくない?

(兄、彼女の隣にやってくる)

  (ナンパな感じで)はじめまして。
  俺ね、アイツの兄貴。
  見た目こんなだから、『チャラい』って思ってるでしょ?

  …正直に言ってごらん?

  いいの、いいの。
  よく言われるから、慣れてる。

  んで、実際のところ……(ふざけた感じで)中身もチャラいでぇーす。

  ちょっとぉー!
  笑いすぎじゃない?

  …「チャラくない」って言うと思った?

  残念…。
  見た目と中身、一緒なんだよね。
  弟とは正反対。

  俺みたいなタイプ、君の周りにいる?

  そっか。
  いないんだ…。

  ってか、なんでさっきから警戒しまくって一定の距離保とうとしてんの?
  君に近づいてるのは、もっと近くでお話して、仲良くなりたいだけ。
  いきなり襲ったり、連絡先を交換しようとしたりしないよ?

  うん。
  ほんと。

  だから、あんまり警戒しないで話してくれると嬉しいな。

  ん。
  こちらこそ、よろしく。

  それはそうと、アイツとはどういう関係?
  ただの友達って感じじゃなさそうだけど…。

  ふぅーん。
  付き合ってんだ…。

  付き合って、どれくらい?

  へぇー。
  アイツ、頼りなかったりしてない?

  ほんとに?
  大丈夫?

  クソ真面目で結構奥手だからさ、たまに君の方からリードしてあげて。

  アイツがイヤになったら、いつでも俺のとこにおいで。
  隣、空いてるから。

(弟、戻ってくる)

弟:お待たせ……って、兄貴!?
  勝手に人の部屋に入んなよ。

兄:お前が勝手に俺のマンガ持ってったから、返してもらいに来ただけ。

弟:借りてないし!
  昨日の夜、リビングで読んでたから、そのまま置きっぱなんじゃないの?

兄:そうだっけ?
  忘れたわ。

弟:用が済んだなら、さっさと部屋から出てけよ。

兄:そんなつれないこと言うなよ。
  もっと彼女ちゃんと話させろって。

弟:ヤダ!
  そうやって、彼女のことも俺から奪うつもりなんだろ!

兄:違う、違う。
  お前、勘違いしてる。

  お前の元カノが俺に乗り換えたのは、お前と一緒にいてもつまんないから。
  わざわざお前から奪ったりしない。

  そんなことしなくても、女の子に困ってないしな。

弟:だったら、彼女と話すこともないだろ。
  とりあえず、今すぐ彼女から離れろよ。

兄:あー、ヤダ。ヤダ。
  ちょっと彼女ちゃんと話してただけなのに、嫉妬しまくる男とか…。

  (嫌味っぽく)器の小ささがバレるぞ?

弟:兄貴以外の相手なら、ここまで言わない。

兄:どうだか…。

弟:(彼女に対して)一人にしてごめんね。
  イヤなことされたり、言われたりしなかった?

兄:この俺が、女の子相手にそんなことするわけないじゃん。

弟:兄貴には言ってない。

兄:はいはい。
  すいませんでしたー。

弟:で、どうなの?

  ……『言われた』?
  なんて?

  (相槌数回打つ)

  (キレて)『俺がイヤになったらいつでもおいで』…?

  おい、兄貴…。
  俺から彼女を奪う気満々のくせに、何が『奪ったりしてない』だ…。

  ふざけんなよ。
  二度と彼女の前に現れんな!

兄:だったら、奪われないように、せいぜいがんばってみな。

  じゃぁね、彼女ちゃん。
  どこかで会ったら、その時はゆっくりお茶しながら話そうね。

(兄、弟の部屋から退室)

弟:……マジでごめん。
  うちのバカ兄貴が迷惑かけて…。

  ん?
  『兄貴に彼女奪われた話』?

  …事実だよ。
  兄貴と会って話した数日後に『ほかに好きな人ができた』ってフラれた…。

  その時は気付かないんだよ。
  『好きな人』が兄貴だってことに…。
  しばらくして、兄貴と元カノが並んで歩いてるのを目撃しちゃって…。

  怒りは、なぜかなかったよ。
  どっちかっていうと、「あぁ…やっぱり…」って納得してたかな。

  君も話して分かったと思うけど、兄貴って話し上手の聞き上手。
  だから、誰も彼もが俺より兄貴を選ぶ。

  悔しいけど、それが現実…。

(彼女、弟を抱きしめる)

  ……ほんとに、君は俺から離れないでいてくれる?

  ……ずっとそばにいてくれる?

(彼女、触れるだけのキス)

  …ふふ。
  『誓いのキス』か…。

  じゃぁ、俺からも…。

(彼氏、触れるだけのキス → 彼女を抱きしめる)

  これで、もう離れらんないからね?
  ずっとずーっと一緒だよ?

  君を好きになって、よかった…。
  ……愛してる…。

(濃厚なキス)※キスしたままフェードアウトしてください。