普段怒らない彼氏は彼女のことでは短気になる

(パソコンのキーボードを打つ音)

(彼女登場)

(一旦、キーボードを打つのをやめる)

…あれ?
まだ残ってたんだね。
俺と一緒じゃん。

……ってか、何怒ってんの?

あぁ、コレ?

本来任されたヤツが締切までにやるべき仕事だけど、コレの締切、週明けの月曜なんだよね…。
今の段階で、締切には到底間に合わない。
となると、皺寄せはどこに来るのか。
…ぜぇーんぶ、俺のとこ。
だから、少しでも未来の俺が楽できるように今やってるだけ。

(再度、キーボードを打ち始める)※以下、キーボードを打ちながら

……ふぅーん。
任されたヤツ、飲みに行ったんだ…。

まぁ、いいんじゃない?
気分転換も大事でしょ。

この程度のことで怒んないよ。
怒るエネルギーがもったいないもん。

(キーボードを打つのをやめる)

……怒ってたのって、その辺のことも全部知ってたから?

そっか、そっか。
ありがとね。
俺の代わりに怒ってくれて。

大丈夫だよ。
こんなザルみたいなサボり方して、周りが気付いてないわけないから。
見てる人はちゃんと見てるよ。

君はこんなサボり方しちゃダメだからね?
俺がもっと上手なサボり方を教えてあげる。

そ。
(直伝じきでん)、周りの評価を下げずにうまくサボる方法。
(イタズラっ子っぽく)門外不出の方法だから、皆には内緒ね?

(伸びをしながら)さて……続きやりますか…。

えっ!?
手伝ってくれるの!?
すっごい助かる!

じゃぁ、ここからここまでのデータ入力してもらっていい?

(2人でキーボードを打ち始める)※以下、キーボードを打ちながら

君は行かなかったの?
飲みに。

誘われたんでしょ?

だったら、行ってきたらよかったじゃん。
皆でワイワイ飲むの好きなのに…。

(相槌数回打つ)

(キーボードを打つのをやめる)

(静かにオコな感じで)はぁ…?
『ボディタッチされた』…?

どこを触られたの?

いいから答えて。

二の腕と肩…。
それ以外はどこも触られなかった?

ほんとに?

どんな触り方されたの?

『二の腕は掴まれて、肩は腕を回された』…。

アイツって君の同期だったよね?

同期とはいえ、馴れ馴れしすぎ…。
……絶対許さない…。

怒るのは当たり前。
だって、下手したら胸に当たったかもしれないんだよ?
普通に考えて、あり得ない。
セクハラで訴えてもいいと思う。

やり過ぎなもんか。

(先輩、立ち上がり、彼女をバックハグする)

……俺の……俺だけの彼女なのに…。

そりゃ、人並みに嫉妬もするし、独占欲もあるよ。
俺のこと、何だと思ってたの?

普段怒んなくっても、頭の中は欲望にまみれてる。
たとえば、こんなことや…。

(彼女の耳元に軽くキス)

こんなことも…。

(彼女の首筋にキスマを付ける)

したいと思ってる。

大好きな子と二人きりなのに、何もしないとかあり得なくない?
男は夜になったら狼になる、って学校で習わなかった?

習わなかったんだ…。
じゃぁ、今知れてよかったね。

……こっち向いて?

(濃厚なキス)

ん?
やめてあげない……って言いたいところだけど、やめてあげる。
警備員さん来ちゃうかもだし…。

続きは、家に帰ってからね。

うん。
残業はこれでおしまい。

キリがいいとか悪いとか、仕事が終わってるとか終わってないとか、全部どうでもいい。
気持ちに火がついちゃったのに、お預けとかヤダ。

さっさと帰って、この続き、いっぱいしようね。