（彼女、クッキーを焼いている）
（彼氏、匂いにつられてやって来る）
んー、いい匂い。
何作ってるの？
クッキー？
なんでクッキーなんか作ってるの？
誰かにあげるの？
ふぅーん。
会社の人たちに、ね…。
『1年間お世話になりました』的な？
（おもしろくない感じで）しなくてもよくない？
どうせバレンタインにもチョコ渡すんでしょ？
だったら、いらないって。
こんなの渡したら、勘違いするヤツが出てくるよ？
この時期に渡すとなると、クリスマスプレゼント的な意味も含まれるし…。
考えすぎなんかじゃないよ。
絶対に出てくる。
皆に渡してても『皆に渡すのは、俺に渡すのためのカモフラージュ』みたいな、自分のいいように脳内変換されるに決まってる。
……それでも、どうしても渡すの？
じゃぁ、味見させて。
いいじゃん。
ちょっとくらい。
君が作るものは全部おいしいのは分かってるけど、俺が1番に食べたいの。
ね？
いいでしょ？
全部食べたりしないよ。
そこまで非常識じゃない。
1枚くらいは残すつもり。
（拗ねて）むぅー…。
ケチ…。
（ワガママに）彼氏の俺が1番に食べられないとか、意味分かんない！
1番に食べたい！
1番に食べたい！
1番に食べたい！
（彼女、うるさいと怒る）
うるさくないもん。
正当な彼氏の権利を主張してるだけだもん。
……ってか、俺、悪くなくない？
悪いのは、味見させてくれない君じゃん…。
俺ばっか悪者にして……もう知らないっ！
（彼氏、そっぽ向く）
（彼女、彼氏にちょっかいを出す）
…うるさい。
ほっといて。
（彼女、彼氏にちょっかいを出し続ける）
（イラついて）……もぅ！何？
いい加減にして。
（彼女、彼氏の目の前にクッキーを見せる）
（彼氏、機嫌が直る）
……クッキー…！？
…食べていいの？
やったー！
あーん。
（彼女、彼氏にあーんしてあげる）
（彼氏、モグモグしてゴックンする）
おいしいー！
ほっぺ、落ちそう。
やっぱ、君の作るものは最高だね。
で、俺の分は、あと何枚？
こんなに作ってるんだし、まだあるよね？
えぇー！？
ないの！？
……普通にあり得ない。
君が作ったクッキーは全部没収。
会社の人たちには、スーパーで安売りされてる市販のクッキーを袋詰めして渡せばいいよ。
中身だけなら、買ったのか作ったのか区別なんてつかないんだし…。
君の手作りのものは全部俺のもの。
ほかのヤツには食べさせない。
（また拗ねて）はい、はい。
すいませんねぇ。
ちょっとしたことで簡単に嫉妬するような心の狭い、ちっちゃい男ですよー。
（彼女、サプライズを用意してたことを伝える）
……えっ！？
サプライズ！？
それって、俺だけの特別なヤツってこと？
ほんとに？
何、用意してくれるの？
えぇー。
教えてよー。
ちょっとだけでいいから。
じゃぁ、ヒント！
それくらいならいいでしょ？
（不満そうに）ヒントもダメなの？
……分かった。
クリスマスまで我慢する。
その代わり、このクッキーよりすっっっっごいの期待してるね。
（触れるだけのキス）※省略可