公園で拾った子犬はあざとい狼

(彼、公園のベンチで横になっている)

(お姉さん、ベンチでボケェーっとしている彼を見つけ、近づく)

(溜息)はぁ…。
(独り言)どうすっかなぁ…。

(お姉さん、心配して声をかける)

ん?
何すか?

体調?
全然大丈夫っすよ?

…ひょっとして、ベンチでボケェーっとしてたから気にしてくれた感じっすか?

すいません。
酒飲みながら、ちょっと考え事してただけっす。

(お姉さん、何かあったのか?と尋ねる)

(言いたくなさそうに)いや、お姉さんに聞いてもらうほどの話じゃ…。

(なかなか言い出せない感じで)あー……んー……ちょっといろいろあって…。

……帰る家がないんすよ。

最初は友達の家に転々と泊まってたんすけど、さすがにずっとってわけにもいかなくて…。
そのあと、適当に女の人に拾ってもらって泊めてもらったら、執着して束縛された挙げ句、ストーカーまがいなこともされて、ここまで逃げてきた感じで…。

今夜泊まる場所どうしよっかな?って悩んでたんす…。

……ねぇ、お姉さん。
無理を承知でお願いがあるんすけど…。

(お姉さん、彼が何か言う前に拒否る)

ちょっ…!?
まだ何も言ってないのに、『ダメ!』なんてひどくないっすか!?

(お姉さん、何を言おうとしてたか言ってみてと言う)

言おうとしてたこと?

(あざとく)……お姉さんの家に泊めて?

(お姉さん、再度拒否る)

マジでお願いします!
ここで出会ったのも、何かの縁だし…。
お姉さんに迷惑かけないようにしますから!

(お姉さん、拒否)

そっか…。
ダメなもんはダメか…。

普通に考えれば、そうっすよね…。

(彼、残ってる酒を一気に煽る)

ご心配をおかけしました。
じゃぁ、俺はこれで…。

(彼、歩き出す)

(お姉さん、彼の手を掴む)

あの……手、離してくれません?
泊めてくれる人、探さないと…。

(お姉さん、心配する)

大丈夫ですって。
次はストーカーまがいなことをしない普通の人を選びますから、心配しないでください。

いざとなれば、今回みたいに逃げればいいだけだし…。

(お姉さん、家においでと誘う)

えっ……お姉さんの家に泊めてくれるんすか?
でも、ダメって…。

(お姉さん、捨てられた子犬みたいな目で見てきたくせに…と言う)

さっきの俺、捨てられた子犬みたいな目してました?
(強がってる感じで)お姉さんの勘違いじゃないんすか?

(素直に)……でも、まぁ……正直、拒否られて寂しかった気持ちがないわけではなかったんで…。

お姉さんに拾ってもらえて、嬉しいっす。

(彼のお腹が鳴る)

うわぁ……今の聞かなかったことにしてください。
安心してお腹が鳴るとか、ダサすぎ…。

(お姉さん、ご飯食べてないの?と尋ねる)

ご飯は……食べてないっす…。
お酒買ったらお金なくなったんで…。

(お姉さん、何か作ろうか?と言う)

お姉さんの手料理!?

(食い気味に)食べたい!食べたい!
お礼は体で払いますから、ぜひ食べさせてください!

(お姉さん、顔を赤くしていたたまれなくなる)

……あれ?
あれ?あれ?
お姉さん、顔赤くないっすか?

もしかして、「体で払う」って言ったから、『エッチぃことされる』って考えてました?

するわけないじゃないっすか。
恩を(あだ)で返すようなこと…。

体で払うっていうのは、掃除、洗濯、その他諸々……マッサージとかもしちゃいますって意味だったのに…。

(からかうように)やーらしぃー。

(お姉さん、もう知らない!とちょいオコ)

嘘!嘘!
からかって、ごめんなさい!

ほんとに悪いと思ってます。
この通り!

……許してくれます?

(お姉さん、仕方なく許してあげる)

(安堵して)よかったぁ…。

(歩き出す2人)

(耳元で)お姉さんが『どうしても…』って望むなら、そっちの方も得意なんで、いつでも言ってくださいね。