(赤ずきんが目を覚ます)
……あっ、起きた。
おはよ。
赤ずきん。
気分はどう?
(赤ずきん、知らない部屋で戸惑っている)
ふふ。
起きたら、知らない天井だったから戸惑ってる?
(ボソッと)…かーわいい。
ここはね、君の村から遠く離れた山奥の俺の家の寝室。
(赤ずきんが身動ぐ)
ごめんね。
君が眠っている間に手足を縛らせてもらった。
こうでもしないと、逃げるじゃん?
少し窮屈かもしれないけど我慢して。
(赤ずきん、助けを求めて騒ぐ)
騒いでも無駄。無駄。
言ったでしょ?
君の村から遠く離れた、って。
どれだけ大声で叫んでも助けは来ないよ。
(赤ずきん、どうして自分がここにいるのかと尋ねる)
どうして君がここにいるのか、か…。
気分がいいから特別に教えてあげる。
君に一目惚れして、俺だけのものにしたくて拉致っちゃった。
(言い訳っぽく)だってぇー、君、人間の男と付き合ってるでしょ?
(赤ずきん、なぜ知っているのかと驚く)
わざわざ聞かなくても、この手の話は流れてくるものだよ?
いつか彼女にしたいなぁって思ってたら、ひょっこり現れた人間の男に横取りされた気持ち、分かる?
(荒ぶる感情を秘めた感じで)八つ裂きにして食い散らかしてやりたいくらいには、
(我に返り、優しく)……怖がらないで。
君に対しては、絶対そんなことしない。
うん。
約束する。
で、どうにかして君を手に入れられないかなぁって考えながら歩いてたら、人間の縄張り近くまで行ってて、「人間に見つかったらいろいろめんどくさいなぁ」と思って引き返そうとしたら、たまたま君を見かけてさ…。
もう運命としか思えなかったよね。
気付かれないように距離を保って
気付いたら君のこと気絶させて拉致ってたから。
やっぱり、俺はどこまでいっても獣だね。
考えるより体が勝手に動いちゃうんだもん。
(しみじみと)好きって、理屈じゃないね。
(赤ずきん、協定違反では?と言う)
……『協定』?
あぁー……大昔に人間と狼が交わした『共存していくために、お互いの縄張りを侵すことなかれ。違反した場合は命をもって償う』っていう、アレ?
もちろん違反してるに決まってんじゃん。
君を拉致ったのはギリギリ人間の縄張りの中だったもん。
(赤ずきん、無理矢理縄を解こうとしている)
…こらこら。
無理に縄を
綺麗な肌に傷がついちゃうじゃん…。
『縄を
…それはできない。
最初にも言ったけど、
(赤ずきん、絶対逃げないと言う)
えぇー!?
絶対逃げるよ。
お願いする時に「絶対」ってつけて約束守ったヤツいないもん。
逃げない?
ほんとに?
(赤ずきんを拘束している縄を解く)
(赤ずきん、逃走する)
(狼、逃げた赤ずきんをすぐ捕まえて、壁ドンする)
ほらね。
やっぱり逃げようとした…。
嘘
逃げないって約束したのに、どうして逃げようとしたの?
君のこと信じた俺を裏切って出ていこうとするなんて、ひどいよ…。
(※ 以下、闇落ちしたような闇深い感じで)
……君がそんな考えなら、俺にも考えがある。
君のいた村、壊しちゃってもいい?
住んでる人も、建物も、ぜーんぶ。
そうすれば帰る場所がなくなるから、ずっとここにいてくれるよね?
…いい考えだと思わない?
……『残酷』?
その言葉を君が言うの?
ついさっき俺との約束を破った君が…。
自分の幸せと村全員の幸せ、どっちを取る?
よーく考えて。
頭のいい君なら、答えはひとつしかないって分かるよね?