どうしても男として見てほしくて酔ったフリをする後輩

(先輩の家にて飲み会中)

(以下、酔っ払って)
ねぇ、先輩。
俺の話、聞いてます?

(ちょっと拗ねて)先輩の嘘()きぃー。
今の絶対、空返事だった。
いつもの『ちゃんと話聞いてるよ』って感じなかったっすもん。

(ドヤァな感じで)ふふん。
先輩のことなら、何でも分かりますよ。
伊達に、後輩やってないんで。

けど、先輩でも適当に返事することがあるって、ちょっと意外だったかも。
誰にも分け隔てなく真摯に向き合ってくれるから…。

まぁ、こんな酔っ払いの相手は適当にしたくなりますよねー。

……ってか、ほかの人たちは?
皆、どこに行っちゃったんすか?

帰った!?

『終電だから』って?
またまたー。

(時計を確認する)

えっ……もうこんな時間!?
全然気付かなかった…。

帰るなら、俺にもひと言声掛けてくれてもいいのに…。
皆、ひどいなぁ…。

(ボソッとシラフな感じで)邪魔者排除成功…。

(酔っ払いに戻って)ん?
何でもないっすよ。

水?

……いただいてもいいっすか?

(先輩がグラスを渡してくる)

いただきます。

(グイグイ飲み干す)

ぷはっ!
ごちそうさまでした。

……酔っ払って迷惑かけたついでに、もうひとついいっすか?

始発の時間まで泊めてください!
お願いします!

へへ。
ありがとうございます。

先輩なら『仕方ないなぁ』って文句言いながらも泊めてくれると思ってました。

……あと、トイレ借りていいっすか?
水飲んだら、なんか行きたくなっちゃって…。

部屋を出て、左のドアっすね。

よいしょ……うわっ!?

(立ち上がろうとして足がもつれてこける)

(こけた拍子に先輩に覆い被さる)

(以下、シラフになって)
いてて…。
すみません、先輩。
もう少しうまく倒れるはずだったんすけど、失敗しちゃいました…。

大丈夫っすか?
頭ぶつけたりしてないっすか?

……顔、赤いっすよ?先輩…。

床に押し倒されて、ドキドキしてたりします?

ふふ。
そんな顔で否定しても、説得力ないっすよ。

トイレ?

あぁ……あれ、嘘っす。
この状況を作るための。

そもそも、俺ザルなんで、酔ってないっすよ。

だから、時間のことも皆が帰ってったことも気付いてました。
全部、先輩とこうして2人きりになりたくて…。

(だま)すようなことして、ほんとにすみません。

でも、こうしないと、先輩、俺のこと意識してくれないじゃないっすか。
いつまで経っても後輩の枠から出られない…。
そうこうしてるうちに、誰かに取られるとかイヤっすもん。

(先輩をハグする)※以下、ハグしたまま。

……先輩……俺、先輩が好き……大好き。

もし、イヤな気持ちが少しでもあったら、5秒数えるうちに、俺のこと殴っても蹴ってもいいんで、押しのけてください。
いきますよ?

5……4……3、2、1、0!(※ 5、4はゆっくり。3、2、1、0は間を開けない)
はい、時間切れ。

……そうっす。
俺、ズルいんす。
小学生がするようなズルい手を使っても、先輩のことが欲しくてたまんない。

とはいえ、先輩も先輩っすよ?
俺のこと押しのけるつもりなかったっしょ?
抵抗する素振り全然なかったし…。

…俺の気持ち、受け取ってくれるってことでいいっすか?

(頷く先輩)

(ワガママっ子っぽく)頷くんじゃなくて、『うん』って言ってください。
ね?

(先輩、『うん』と答える)

(ものすごく嬉しそうに)……ふふ。
ヤバいっす…。
嬉しすぎて、死にそう…。

(耳元で)……大好き……先輩…。

(触れるだけのキス)