眠くてだるくて仕事を真面目にしないアザラシ系な神様

(チリーンみたいな鈴の音)

(寝起きで)はぁーい。
(大きいあくびしながら)…あぁ…ねむ…。

せっかく来てくれたけど、ちょっと待っててくれない?
普通にまだ眠くて無理…。
二度寝させて…。

ちょっとは、ちょっとだよ。
……10時間くらい?

その間、そこら辺にあるもので適当に暇潰してて。
君の世界の娯楽と呼べるものは一通りあるはずだから。

じゃぁ、おやすみぃ…。

(彼女に引き止められる)

(イラっとして)……何?
俺、眠いって言ったよね?

とにかく、今は一旦寝かせて。
じゃないと、やる気スイッチ入んない。

(イラついてる感じの溜息)はぁ…。
……君さ、がんばりすぎ…。

いい意味でも、悪い意味でもクソ真面目。
『自分がやらなきゃ!』って思うのも、完璧にやろうとするのも個人の自由だと思う。
でも、『明らかにキャパオーバーしてる』って気付いてるのに、誰にも頼ろうとしないで自分を(誤魔化ごまか)して、追いつめて、パンクするのは、ただのバカ…。
せっかく今まで習得したスキルも、死んじゃったら全部意味なくなるって思わなかったの?

あれ?
「死んでる」って……言ってなかったっけ?

あぁー、ごめん。
眠すぎて(諸々もろもろ)大事なこと言うの、忘れてた。

では、改めて…。

(咳払い)

この世界は死後の世界。

そ。
君の世界のラノベとかで登場する、あの世界。
で、俺は死後の世界の神様。
だから、君が生きてた頃にがんばりすぎてたことも知ってる。

疑わしい目で見るのは、やめて。
今はこんなだけど、やればできるんだよ?

(言い訳っぽく)自称とかじゃなくて、ほんとに!
やる気スイッチが入るまでに時間がかかりすぎるだけで、ちゃんと仕事してるし…。

俺の仕事…?

転生希望の子を転生させること。
でも、これにはふたつの条件がある。

ひとつ、生きてた頃の世界には転生できない。
ふたつ、記憶はそのままにできるけど、赤ちゃんから人生やり直し。

これらの条件を飲むっていうなら、転生させてあげる。

……どうする?

ふふ。
『転生する!』って即答する子、久しぶりかも。

何か心残りでもあるの?

『やり残したことをやりたい』か…。
ちなみに、それってどんなこと?

(相槌数回)

(つまんなさそうに)……ふぅーん。
OK。

君は転生させない。

なんでも何も、転生したところで、またがんばりすぎようとしてんじゃん。
死なせるために転生なんかさせたくないね。
それに、転生させるのも、楽じゃないんだよ?
結構エネルギー使うんだから…。

転生させない代わりに、俺のサポートしてよ。
秘書って言えば分かりやすいかな…?

そうそう!
俺のスケジュール管理とか…。

…やってくれる?

やったー!!

……えっ……いや……待って。待って。
なんで仕事させる気満々なの?
マジで意味分かんないんだけど…。

その辺も俺の代わりに適当にやっといてよ。

(ガサゴソ探し物をしながら)えっとねぇ……あった!

はい。
仕事のマニュアル。
これ見ながらやれば、大抵のことはできるから。

えぇー。
なんで俺自身が仕事しなきゃいけないの?
めんどくさいし、だるいし、疲れるじゃん…。
君みたいな真面目な子を代役に立てれば、自由気ままな(なま)け者生活ができると思ったのに…。

『だったら転生させて』って言われてもなぁ…。
(悩むように)ん゛ん゛ー…。

(諦めたように)……分かった。
俺の負け…。
いい機会だと思って、いろいろ諦めることにする…。

無理のない範囲で、お手柔らかによろしくね…。