買い物に付き合ってくれたお礼にコスメをプレゼントする憧れのお兄ちゃん

(ショッピングモールにて)

いやぁー、楽しかった。
久しぶりに買い物したら、買いすぎちゃった…。

ありがとね。
付き合ってもらっちゃって…。

時間も時間だし、そろそろ帰ろっか。

(彼女が立ち止まっている)

(彼女の元に歩み寄る)

……どうしたの?

新作コスメ?
見ていく?

僕のことは気にしないで。
せっかく来たんだもん。
見ていこ?

(コスメショップに入る2人)

ここのブランドのコスメが好きなの?

ふぅーん。
そうなんだ…。

ん?
アイシャドウの色、どっちが似合うか?

僕に聞かれても、メイクのこと全然分かんないって。
君の好きな方にしたらいいんじゃない?

……僕の意見?

ん゛ん゛ー……どっちも似合うと思う。

(慌てて)どうでもいいから言ってるんじゃないよ?
ほんとにどっちも似合うと思うから言ってる。

こっちの色は大人っぽくて、かっこいい感じ。
仕事の時とか、気分を上げてがんばりたい時にいいかも。

で、こっちの色は普段使いできそうなかわいい感じ。
季節関係なく使えそうで、使い勝手がいいかも。

以上。
こんなので、参考になる?

参考になったなら、何より。

で、どっちにするの?

こっちの色?

うん。
いいと思うよ。

ほかは?
買う物ない?

リップ…?
限定色、いい色じゃん。

うん。
そのアイシャドウに合わせたら、すごく似合うと思う。

……買わないの?

お財布事情か…。
なら、僕がプレゼントしてもいい?
今日一日、付き合ってもらったお礼に。

ほら。
さっき選んだアイシャドウも渡して。
一緒に会計してきちゃうから。

(ちょっとムッとして)……こういう時は遠慮するんじゃなくて…?

(満足そうに)そ。
『ありがとう』の一言でいいの。

店の前で待ってて。
すぐ行く。

(店の前で待つ彼女の元へ行く)

お待たせ。

はい、どうぞ。
中、見てみて。

ふふ。
びっくりした?

さっきどっちがいいか僕に選ばせたアイシャドウ2種類とリップのセット。
どっちも似合うのに、どっちかしか買わないなんてもったいないもん。

僕がプレゼントしたかっただけだから、受け取って。

どうしても気(つか)っちゃうって言うなら、今度のデートの時、これでメイクして、僕に1番に見せにきて?
それがプレゼントのお返しってことで。

ん。
約束ね。

とはいえ、もう少し危機感を覚えた方がいいかな。
これまで、僕以外の男からリップをプレゼントされたりしてないよね?

……なら、いい…。

男が女性にリップをプレゼントする意味、知らない?

ちょっと耳貸して。

(耳元で)キスがしたい。

……って言えば分かる?
僕の気持ち。

嘘じゃないし、軽い気持ちでもないよ。

僕の中では、君は特別な女の子。
ずっと前からね。
とはいえ、多少なりとも歳の差があるし、この思いがバレて『キモい』とか思われたくなくて、好きじゃない子と付き合ったりもした。
好きになれるかもしれないって望みにかけて…。

……結果は全然ダメ…。
君以外を好きになれなかったし、一緒にいても全然楽しくなかった。

一生の思い出にするつもりで荷物持ちのお礼を言い訳に、二人きりで今日一日買い物デートして、「やっぱり好きだ」って気持ちが(あふ)れちゃって……もう止めらんない。

これから先も隣で笑ってほしいし、さっきみたいに迷ったら『どっちがいい?』って聞いてほしい。
いきなりで混乱すると思うけど、僕と結婚を前提に付き合ってくれませんか?

うん。
分かった。
返事はいつか聞かせて。

(無理矢理話題を変える感じで)今日はもう帰ろっか。

(彼女、警戒する)

(ちょっと拗ねて)……そんなに警戒されると悲しいなぁ…。
たしかに、君のことは結婚したいくらい大好きだし、「キスしたい」って言ったよ?
でも、君の気持ちを無視して、無理矢理…みたいなことは絶対にしませんー。

返事もらうまでは、今まで通りのお兄ちゃんでいるから。
ほんとに、何もしないから。
……家まで送らせて?
ね?

(2人並んで歩き出す)※ 省略可