(部屋の扉をノックする音)
お姉さん。
俺。
……お姉さん?
入るよ?
(部屋の扉の開閉音)
(ベッドで寝ているお姉さん)
(独り言で)…寝てたんだ…。
ふふ。
かわいい寝顔。
いい拾い物したなぁ…。
(お姉さんが起きる)
あっ……ごめん。
起こした?
いいよ。
横になったままで。
ノックしたんだけど、返事がなかったから心配で入っちゃった。
風呂に入って、そのまま寝てたの?
そっか。
相当疲れてたんだね。
少し眠って疲れは取れた?
ん。
なら、よかった。
それにしても、ごちそうさま。
いいもの見せてもらっちゃった。
布団に潜りもしないでバスローブのまま眠ってるから、裾が見えそうで見えないギリギリまでめくれて生足が見えてる。
ほら、今も…。
ヤダよ。
忘れるとか…。
そんなもったいないことしたら、バチが当たっちゃう。
って、こんなこと話に来たんじゃなかった…。
はい、コレ。
下着の替え、持ってきた。
この部屋、服の替えは置いてても、下着の替えは置いてなかったから…。
たぶんサイズ合ってると思う。
部屋から離れる前にハグしたでしょ?
あの時にだいたいのサイズ把握した。
(ドヤァな感じで)ふふん。
俺の特技のひとつ。
へぇー。
文句言っちゃうんだ…。
だったら、次からはきちんと採寸しよっか?
上から下まで…。
イヤなら、文句言わないの。
で、あとは服だけど…。
(お姉さんから離れる)
(クローゼットを開ける)
服の好みある?
なければ、俺の好みで選んじゃうけど…。
ん。
分かった。
任せて。
そうだなぁ……お姉さんのイメージでいうと…これかな…?
(お姉さんに近づく → 服を渡す)
はい、どうぞ。
分かってるって。
着替え、見たりしない。
後ろ向いてるから、終わったら声掛けてね。
(お姉さんが少し離れたところで着替え始める)
ねぇ。
着替え終わったら、ご飯食べに行こっか。
おなか減ってるでしょ?
(お姉さんのおなかが鳴る)
(笑いを噛みしめながら)ほんとに行かなくていいの?
爆音でおなか鳴ってたけど…。
ここまで聞こえてた。
『ぐぅーー!!』って。
何、食べたい?
『何でもいい』はナシね。
ちゃんとお姉さんが食べたい物言って。
ん゛ー、いきなり言われても困るか…。
じゃぁ、嫌いな物とか食べられない物とかある?
だって、嫌いな物とか食べられない物があるとメニューの中から選ぶ選択肢が減るじゃん?
それって、すっごく悲しくない?
でしょ?
だから、教えて?
お姉さんの嫌いな物とか、食べられない物。
(お姉さんが嫌いなものを話す)
…ふぅーん。
そうなんだ。
覚えとく。
……着替えられた?
振り返るよ?
おっ!
いいねぇ!
でも……なんか違うなぁ…。
何だろう…?
(再度クローゼットに向かう)
(独り言で)こっち…?
でも、これだと同じような系統だし…。
これも、何だかなぁ…。
ん?
(上機嫌に)うん。今、すっごく楽しいよ。
女の子の服の着せ替え、好きだもん。
かわいい女の子をよりかわいく、しかも自分好みにできるとか、楽しい以外なくない?
お気に入りの子だったら、なおさらね。
今更、何言ってんの?
お姉さんは俺のお気に入りに決まってんじゃん。
じゃなきゃ、『困ってるから』なんて理由だけで人助けなんかしないって。
面倒事に巻き込まれるのとか、ダルいもん。
(独り言で)これに…これを合わせて……うん、これだ!
(服を手に、お姉さんに近づく → 服を渡す)
それ脱いで、こっち着てみて。
ほら
早く。早く。
着替え終わったら、さっきみたいに声掛けて。
(お姉さんが着替え始める)
でさ、お姉さん拾った時に「お礼に働いて」って話してたの覚えてる?
あれさ……俺のそばで働いてくれない?
専属秘書というか、マネージャー的な感じでサポートしてほしい。
サポートって言っても、ちょっとした雑務をこなしてもらうだけで仕事自体は全然難しくないよ。
助けたお礼の分を差し引いて、給料も出すし……どうかな?
(返事を渋るお姉さん)
…いい返事をくれない理由は、まだ厄介な理由があるの?
この際だし、全部言っちゃいなよ?
ほら。
(お姉さんが理由を話し出す)
そっか…。
住むとこ、か…。
……お姉さんさえよかったら、俺の家に来る?
全然迷惑じゃないって。
捨て猫拾ったら、最後まで面倒見るでしょ?
それと一緒。
実際、部屋余ってるし、家が決まるまで好きなだけいればいいよ。
居心地よかったら、そのままずっといてくれてもいいし…。
いいの。いいの。
一人で住むには広すぎるくらいの家で、寝るために帰るくらいしかしてないから。
ぶっちゃけ、お姉さんが来てくれた方が助かる。
(お姉さんの着替えが終わる)
着替えられた?
…ヤバ……かわいい…。
すごく似合ってる。
じゃぁ、このままご飯行こ。
そのかわいい姿、見せびらかさないと。
あぁー、腹減ったー。
和食、洋食、中華の中だったら、どれがいい?
イタリアンとか、フレンチとかでもいいよ。
何が食べたいかは決めらんなくても、食べたいジャンルくらいは決められるでしょ?
決めてくれたジャンルで、とびっきりおすすめの店に連れてってあげる。
あっ!
あと、さっきのサポートと家の件の返事はご飯が終わるまでに考えといて。
ちなみに、返事は『Yes』か『はい』だけだから。
それ以外の返事したら、どうなるか……大人なら分かるよね?