小鳥遊きの
voice:小鳥遊きの

罠から逃げるのは貴女次第

(酔ってる感じで)せんぱーい。
もう1件行きましょー。

えぇー!?
なんでダメなんすか?

『お店が閉まってる』?

嘘ぉー?
だって、まだ2件しか行ってないんすよ?

飲み始めて3時間くらいしか経ってないし、閉店までまだまだ余裕…。

(スマホで時間を確認する)

……じゃなかった…。
もうすぐ日付変わるじゃん…。

先輩と飲むの楽しくて、いつも時間の流れが早く感じちゃうんすよね。
あーぁ…もっとゆっくり時間が流れたらいいのになぁ…。

ねぇ、先輩。
もう1件行けないなら、俺の家で飲みましょ?
まだ飲み足りないっすもん。

コンビニで酒買って、つまみも買って…。
あと、なんか適当に食べたい物いろいろ買って…。

(ビニール袋がガサッと音を立てる)

あれ?
コンビニに寄った後?

……もしかしなくても、俺の家で宅飲みすることが決まってた感じっすか?

マジっすか…。
(笑いながら)全然記憶ないっす。
2件目の店出てからここまで、先輩と何を話してたのかとか、どうやって来たのかとか…。

記憶ない間に、先輩に迷惑かけたりしてないっすか?

そっか…。
なら、よかったっす…。

あっ……部屋、片付けしてないや…。
どうしよ…。
先輩来たら、ショック受けるかも…。

男の一人暮らしっすよ?
マメに掃除するわけないじゃないっすか。
休みの日に全部まとめてやってるんで、今は荒れ放題というほどではないけど荒れてます…。

なので、家着いたら玄関で待っててもらってもいいっすか?
先輩がショックを受けない程度にパパッと片付るんで…。

そのままでいいんすか?
ほんとに?
俺の部屋見てショック受けないでくださいよ?

(そのまま歩き続ける2人)

(後輩の家に到着)

やっと家に着いた。

ちょっと待ってくださいね。
今、鍵開けます。

(鍵をガチャガチャする)

あれ?
鍵が開かない。

あれ?
おかしいな…。

(先輩に鍵を取られる)

ちょっ、先輩。
鍵、返してくださいよ。

(先輩が鍵を開ける)

……ありがとうございます。

そこまで酔ってないっすよ。
今のはちょっと手元が狂ってただけ。
いつもはこんなじゃないっす。

(玄関扉を開ける音)

どうぞ。
片付いてないんで荒れてますけど…。

(玄関扉が閉まる音)

(先輩をバックハグする)

(以下、シラフで)先輩、警戒心なさすぎ…。

男の一人暮らしの部屋にノコノコついてきて入っちゃうなんて…。
何されても文句言えないっすよ?

全然酔ってないっす。
さっきまでのは演技してました。
すみません。

どうしても先輩と2人きりになりたかったから…。

先輩、気付いてますよね?
俺が先輩に特別な感情持ってるって…。
でも、先輩は俺のこと、ただの後輩として見ようとしてる。
…でしょ?

分かってます。
先輩の立場なら、それが正しいってことは。

……けど、もう限界なんすよ…。
自分の気持ち、抑えらんない。

ここから先は先輩が決めてください。
5秒待つんで、イヤだったら逃げて。
逃げなかったら合意してくれたとみなして、ズルいことします。

(ゆっくりと)…5、4、3、2、1……。

いいんすね?

…ズルい後輩で、ごめんなさい。

(濃厚なキス → キスしながら鍵をする)※キスしたままフェードアウトしてください。