(玄関扉の開閉音)
おかえり。
…こっち来い。
いいから!
(彼女を抱きしめる)
動くな。
今は黙ってジッとしてろ。
口出しするつもりなかったけどさ……お前、がんばりすぎ…。
そんなの、ひと目見りゃ分かる。
ここ数日で今日が1番ひどい…。
身も心もズタボロじゃん…。
こんなになるまでがんばる必要って、何かあんの?
理由があるなら、話してくれよ…。
……がんばるお前見るの、つらい…。
そうだよ。
自分の気持ち言うのが苦手な俺がここまで言うってことは、今のお前はかなりヤバい状態ってこと。
自分のことなのに、
期待に
ほどほどにしとけ。
あまりにひどいと周りが心配するから言ってんの。
その一番は、俺な。
日に日にひどくなってくお前が無事に家に帰ってきてくれるのをヒヤヒヤしながら待ってた。
「帰ってくる途中で事故に遭わないか」とか、「移動中に眠りこけて、そのまま拉致られないか」とか…。
そんなことないとは言い切れないだろ。
万が一ってことはあるんだし…。
(溜息)はぁ…。
なんでそこまで能天気なんだか…。
とにかく、自分を犠牲にしてまでがんばろうとすんな。
『ちょっと疲れたな』って思ったら、休め。
自分で自分が止めらんないなら、俺のとこに来い。
実力行使で休ませてやる。
『たとえば』?
んー……こうやって抱きしめて動けなくさせたりとか、あえて抱き潰して体力奪ったりとか…?
まぁ、そのあたりは状況次第だな…。
約束できる?
…ん。
約束な。
(触れるだけのキス)
じゃぁ、手始めに一緒に風呂に入るか。
残念でしたー。
今のお前に拒否権はありませーん。
今のまま一人で風呂入ったら、確実に寝るだろ?
下手したら、そのまま…ってこともあり得る。
そんなことさせないために、俺が監視役として付き添うことにする!
(歯切れ悪く)……イチャイチャしたいのも…まぁ、なくはない…かもしれない……。
(開き直って)あぁ、そうだよ!
イチャイチャしたいんだよ!
待つの平気な俺ですら我慢の限界、とっくに超えてんの。
疲れてるとこ悪いけど、少し付き合ってもらうから。
さすがに最後まではしない。
そもそも最後までするには、お前の体力が
その代わり、別の方法で楽しもう。
イチャイチャする方法なんて、いくらでもあるんだし、やり方変えればそれなりに楽しめるっつーか……ここから先は、風呂に入ってからのお楽しみってことで…。
今言ったら、せっかくの楽しみが減るだろうが…。
うっさい!
『かわいい』とか言うな!
頭も撫でんな!
ふぅーん。
よーく分かった。
人のこと
今更謝っても遅い。
優しくしてやるつもりないから、覚悟しとけよ?