先輩、お待たせしてすみません。
帰りましょうか。
今日も寒いですね。
これ、よかったら使ってください。
俺の使いかけですけど、カイロです。
温かいですよ。
先輩、冷え性なのに、こういうの持つの嫌いますよね。
まぁ、持たなくてもいいんだけど…。
だって、こうやって……先輩の手、繋ぐ口実になるから。
先輩、顔真っ赤ですよ。
付き合ったの、俺が初めてってわけじゃないのに、そんな
はいはい。
文句ならいくらでも帰り道で聞きますから、温かい場所に行きませんか?
さすがに先輩、体冷えすぎです。
手はいつも以上に冷たいし、ほっぺも氷みたいに冷たい。
このままじゃ風邪引きかねないので、ちょっと寄り道して温かい物飲んでから帰りましょう。
(カフェに入る)
ふぅ…。
暖房効いてて温かいですね。
先輩は飲み物、何にしたんですか?
ホットチョコレートかぁ。
美味しそうですね。
一口貰えませんか?
(一口飲み物を飲む)
甘ぁ~い!
でも、美味しいですね。
疲れた時にはよさそうですね。
(一口飲み物を飲む)
俺ですか?
俺はいつも通りブラックコーヒーです。
一口ですか?
やめておいた方がいいと思いますよ。
先輩、苦いの嫌いでしょ?
ん~、後悔しても知りませんからね?
はい、どうぞ。
ほら、言わんこっちゃない。
先輩のホットチョコレート飲んでください。
ったく、どうして苦いの嫌いなのに無理して飲んだりしたんですか?
間接キスしたかった…?
…っ!!
今頃気付いてすみませんね!
そんなことで喜んだりする人と付き合ってこなかったので、どう反応していいのか分からないだけです。
顔だって真っ赤になりますよ。
さっき俺が
そうやって俺で遊ぶのやめてくださいよ。
俺が年下なの気にしてるの知ってるでしょ?
俺だって、少しでも先輩と対等になれるようにがんばってるんですから。
どうがんばってるかって?
そ、それは内緒です!
秘密です!
言っちゃったら、また別の方法を考えなきゃいけなくなるんですから。
今日はバレンタインだから、カップルが多いですね。
俺ですか?
貰ってませんよ。
何人か持ってきてくれた人がいましたけど、お断りしました。
だって、先輩からだけ貰えたら嬉しいですから。
だから、はい、先輩。
『何?』って、ください。チョコ。
俺、今日ずっと先輩から貰えるのを楽しみにしてたんですから。
えっ、ないんですか?
本当に?
『実は冗談でした』とかっていうオチじゃないですか?
そもそも持ってきてないんですか!?
(肩を落とした感じで)
(溜息)はぁ…。
俺、もう明日から生きていけない…。
だって、先輩からの愛が貰えなかったんだもん。
先輩から好きって言われたことないし、チョコも貰えないし…。
先輩って本当に俺のこと好き?
俺がグイグイ押したから、仕方なく付き合ってくれてるんじゃないんですか?
違うんですか?
本当に?
でも、チョコはくれないんですよね?
俺が甘い物食べないから用意しなかった?
ちゃんと俺のこと考えてくれてたんですね。
ありがとうございます。
でも、先輩から貰える甘い物ならいくらでも食べますよ!
(耳元で)
先輩自身がチョコの代わりに俺に食べられてくれるっていうなら、とびきり美味しくいただきますけどね。
痛っ!!
ごめんなさい。
冗談ですって。
怒らないで。
あっ、ちょっと待って!先輩ってば!
待って!先輩!
ちょっと調子にのりすぎました。
ごめんなさい。
先輩からチョコが貰えないってことが思った以上にショックだったみたいです。
先輩からは貰えるって、変な自信が自分の中にあったので…。
来年はチョコくださいね。
手作りとかじゃなくていいですから。
俺、楽しみにしてます。
(先輩に手を引かれている)
ちょ、ちょっと、先輩、どこ連れて行くんですか?
路地裏?
ぇ、何?
少し屈んで、目瞑るんですか?
いいですけど…。
こうですか?
(リップ音)チュ
先輩からキスしてくれた…。
こんなの初めて…。
どうしよう…。
興奮してきちゃいました。
先輩、もっとしてもいいですか?
人の目はないからいいですよね?
ダメって言われてもしますから。
ごめんなさい。先輩。
(長めのキス)チュ
ごめんなさい、先輩。
やりすぎちゃいました。
先輩の顔、さっきよりも真っ赤になっちゃいましたね。
先輩、素敵なバレンタインをありがとうございます。
チョコのことなんて忘れるくらい素敵な贈り物でした。
こんなサプライズが待ってるなんて思ってもみなかったです。
サプライズついでに、一つ俺の願いを聞いてもらえないですか?
『好き』って先輩に言ってほしいんです。
今回だけでいいから。
お願いします。
(抱きしめて)
ありがとうございます。
俺、すごい嬉しいです。
先輩、手、貸してください。
ドキドキしてるの分かります?
今日は先輩にドキドキさせられっぱなしです。
もっともっと先輩のこと好きになっちゃいました。
(耳元で)
ホワイトデーは俺が先輩をドキドキさせますから、覚悟しててくださいね。