(彼女が起きてくる)
おはよ。
…どうしたの?
いや…いつもなら『おはよう』のハグからのキスが定番なのに、今日はしてこなかったから気になっただけ…。
ルーティンになってるものがないと調子狂うっていうか、変な感じするじゃん?
今、そんな感じ。
ん……いつもの、しよ?
なんで『ヤダ』って言うの?
隠したいことがあるから俺の近くに寄れないんでしょ?
何もなきゃ、朝からいつもみたく抱きついておいでよ。
…君が来ないなら、俺が行く。
あっ!
逃げるな!
(彼女を捕まえる)
…体、あっつ…!
熱出してんじゃん。
ないはずないでしょ。
ヤケドするかってくらい熱いのに…。
熱、測って。
(強制っぽく)は・か・っ・て!
(彼女が熱を測り始める)
少しでもズルいことしたら怒るからね。
いい?
(彼女から少し離れる)
測ってる間に…ホットミルクでも作ろっかな…。
牛乳入れて…蜂蜜あったよな…。
蜂蜜…蜂蜜……あった!
ちょっとだけ蜂蜜入れて…。
レンジでチン!っと。
(熱が測り終える)
(彼女の元に近づく)
測れた?
こら!
隠さない!
どれどれ……うーわ、ガチなヤツじゃん…。
今日のデートは中止ね。
こんなに熱あって、デートに行けるわけないでしょ。
というより、俺がデートに行きたくない。
「倒れないかな?」とか「気分悪くなったりしないかな?」とか、いろいろ心配しすぎて、これっぽっちも楽しめるわけないじゃん。
行くとしても、君が元気になってから。
(ホットミルクが出来上がる)
できたみたい。
ちょっと待ってて。
(取りに行って、彼女に渡す)
はい、どうぞ。
あんまり熱くしてないけど、一応舌ヤケドしないように気を付けてね。
なーんで謝るの?
謝る必要なくない?
風邪ひかない人なんていないんだよ?
今回はたまたま君が風邪ひいたけど、もしかしたら、俺が風邪ひいてたかもしれないし…。
そうなった時、俺が「ごめんね」って謝ったら、君はどう思う?
うん。
そうだよね。
だから、謝んなくていいの。
今日一日俺にお任せ!
家事はもちろん、君の看病もね。
大丈夫。
ここ数年、風邪ひいてないし。
うつんないって。
もし、うつったとしても、君からの風邪なら喜んで引き受けるよ。
で、君はその分早く風邪治して。
だって…ほんとはすっごくつらいんじゃない?
なのに、『つらくないですけど?』みたいな顔してる…。
…俺、そういうの見る方がつらい…。
だから「俺が身代わりに…」って思って…。
…ごめん。
今よりも、もっとつらい顔させた…。
そんな顔させたかったわけじゃなくて…。
今のは聞かなかったことにして、君は風邪を治すのに集中して。
ほら。
せっかくのホットミルクが冷めちゃう。
熱いうちに、飲んで。
あぁ…急いで飲まなくていいから。
ゆっくり飲みな。
舌ヤケドしちゃうよ?
今、熱出てるけど、そのほかには何かある?
喉の痛みとか、咳が出たりとか…。
そっか…。
じゃぁ、あとでお粥作って薬と一緒に持ってくるね。
薬飲まなきゃでしょ?
ホットミルクだけじゃダメ。
胃がやられちゃうかもだし、そうじゃなくても体力なくなってるんだからちょっとでも食べて体力つけないと治るものも治らないよ。
俺特製のおいしいの作るから。
食べてくれる?
ん。
ありがと。
…飲み終わった?
カップ、ちょうだい。
あとで洗っとく。
さぁ!
次はベッドに行こっか。
はい!
ちょっと待ったー!
なんで自分で歩こうとしてんの?
お姫様抱っこさせてよ。
言ったじゃん。
「君の看病も俺にお任せ」って。
お姫様抱っこも看病のうち。
体力が減ってきてる君の負担を少しでも軽くするため。
ね?
(拗ねた感じで)むぅ…。
聞き分けの悪い子はこうしてやるっ!
(彼女をお姫様抱っこする)
強制連行って言う名の俺のワガママに付き合って?
(彼女のベッドまで連れていく)
(彼女をベッドに下ろす)
到着ー!
布団かけて、大人しく寝てて。
ダーメ!
ベッドから出ることは許さないよ!
トイレ行く時は仕方ないけど、それ以外は全部ダメ。
ご飯も飲み物も俺が持ってくるから連絡して。
…どうしてもイヤなの?
…だったら…!
(彼女の布団に入る)
(耳元で)今日だけの限定サービスで、添い寝もしてあげる。
俺の大好きな彼女はめちゃくちゃ心細くて寂しいくせに、強がっちゃうからね。
分かるよ。
目を見れば一発で。
捨てられた子猫みたいな目してるもん。
『行かないで』って。
大丈夫。
ずっと一緒にいるよ。
どこにも行かない。
だから、安心して?
うん。
ほんと。
ほんとの証拠に手繋ごっか。
そしたら、ずっと一緒にいられるでしょ?
…安心しきった顔して…。
かわいいなぁ…。
ほかに言いたいことあるなら、遠慮せずに言うこと。
できる人ぉー?
ん。
いいお返事。
そろそろ、寝ようね。
早くよくなりますように。
(唇でない場所に軽くキス)※省略可