(彼女が走ってやってくる)
おはよ。
いつもよりだいぶ遅いけど、まだ時間に余裕あるから全力で走ってこなくってもよかったのに…。
『悪い』とか感じないでよ。
『寝坊したから遅れる』って連絡くれたんだし…。
こうやって待つのも、待ち合わせのひとつの
まぁ、とりあえず、ゆっくり深呼吸して息整えて。
はい。
吸ってぇー、吐いてぇー。
もう1回。
吸ってぇー、吐いてぇー。
それから、手出して。
はい、水。
待ってる間に買っといた。
お金はいいよ。
ひと口飲んで落ち着きなって。
…ほんとクソが付くほど、
待ってたことといい、水のお金のことといい、俺が好きで勝手にやってることなんだし、気にしなくていいんだよ?
『どうしても気にしちゃう!』って言うなら、これからも一緒に行き帰りしてくれない?
俺の毎日の楽しみだから。
はぁ!?
俺の話聞いてた?
なんで先に行かなきゃいけないの?
意味分かんない。
また君が寝坊したとしても、絶対先になんか行かない。
もしも、君がガッツリ寝てて起きたらお昼でした、みたいなことになってもここで待ってる。
で、一緒に遅刻する。
理由?
そんなの適当に言っとけばいいよ。
「朝起きたらお腹痛くて、トイレと友達になってました」みたいな?
まぁ、あからさまに嘘ってバレるような理由だから、きっと怒られるだろうね。
だとしても、俺は君を置いて一人で先に行ったりしない。
うん。
マジ。
自分の評価より君との時間の方が何倍も大事。
いやいや…。
『もう寝坊しない』じゃないんだよ。
この程度のことで、自分を追い詰めるようなこと言わないの。
そんなこと言ってると、生きるの苦しくなっちゃうよ?
ふぅーん。
うわっ…ひっどーい。
俺、そこまで
ほんのちょーーっとだけ楽をしてるだけですぅー。
ん?
嫌いなわけないよ。
俺にはできないことだもん。
でも、今日の君はいつもと違って、ちょっと
付き合いが長いとダメなとこも似てきちゃうのかな?
……確認だけど、いつもみたいにきちんと身だしなみは整えてきたんだよね?
…やっぱ、そうだよね…。
残念ながら、ここまで全力で走ってきたから、髪ボサボサになっちゃってるよ。
ほら。
こことか、アホ毛立ってる。
(バカにするように)…うっそぉー!
ふふ。
さっき俺のこと
…大丈夫だよ。
寝癖もなければ、ボサボサでもない。
いつもと変わらずバッチリ決まってて、かわいいよ。
あっ!
次の電車乗んないとマジで遅刻する…。
はいはい。
文句は電車乗ったら聞くから。
急いで行こ。
(耳元で)