(人ごみの中歩く2人)
やっぱ、皆、花火見に来てんだな…。
会場に近づくにつれて、どんどん増えてる…。
大丈夫か?
人酔いとかしてね?
そっか…。
大丈夫ならいいけど…。
(彼女が人とぶつかりそうになる)
…あっぶね…。
ちょっと遠回りして行くか。
大丈夫だって。
始まるまでには会場に着くから。
(彼女を連れて人気のないところに行く)
(溜息)はぁ…。
マジで人多すぎ…。
歩きにくさ、半端ねー…。
ん?
あぁ…こっちで合ってる。
間違ってねーよ。
(石垣に腰掛ける)
ん。
俺の膝の上に座って足見せろ。
『なんで?』じゃねーよ。
お前、足痛いんだろ?
隠しても無駄。
引きずって歩いてたの、さっき見た。
嘘
グダグダ文句言っても仕方ねーだろーが。
このあたりで座れる場所なんて、どこにもねーんだし。
(溜息)はぁ…。
じゃぁ、ここでクイズ。
なんで男の浴衣が黒とか紺とか濃いめの色が多いかしてるか分かるか?
ぶっぶー。
残念。
定番でスッキリ見えるってのもあるけど、ちょっと違う。
正解は、今の俺たちみたいな状況のため。
女子の浴衣にも、黒とか濃いめの色もあるけど、白とか淡い色とか、かわいい系の色着てる子が多いじゃん?
そういう子たちが、そのままこういう地べたっぽいとこに座ったら、尻のとこが絶対汚れるだろ。
かといって、座らないわけにもいかない状況だったら、どうするか。
答えは、ひとつ。
男が先に座って女子を自分の膝に乗せる。
そうすれば、女子の浴衣は汚れずに
だから、多少汚れても目立たないような色をしてる。
まぁ、今の話がほんとかどうかは知らねーけどな。
だって、俺個人の意見だし。
何?
今の、信じたの?
お前、何でもかんでも信じすぎ。
少しは疑うってことをしろよ。
ほら。
もういいだろ?
さっさと俺の膝に座って、足見せろ。
今ここで言うこと聞かなかったら、無理矢理座らせて、足見るけど…?
(彼女が膝に座って足を見せる)
最初から大人しく言うこと聞きゃいいんだよ。
あっ……そのまま、ちょい待ち。
明かり
スマホのライト
(ライトを点けて、彼女の足を見る)
あーぁ…
これ、相当痛かっただろ?
いつから我慢してた?
はぁ!?
バカっ!
いつも我慢すんなっつってんだろ!
ったく…。
スマホ、この位置で持ってろ。
こういうこともあるかもと思って準備してた。
(彼女の足に絆創膏を貼る)
よし。
これでOK。
……さっきはキツい言い方してごめん。
本来なら、俺がもっと早く気付くべきだったのに、お前と初デートだからって、
…お前と花火一緒に見るの、夢だったから…。
ぶっちゃけ、お前、想像以上にヤバい…。
マジでかわいすぎ…。
浴衣ってだけでもすっげーかわいいのに、メイクもいつもと違ってかわいいし、髪アップにして最高にエロかわいくなってるし…。
ここが外じゃなかったら、確実に襲ってた。
嘘じゃねーよ。
手、貸してみ?
な?
すっげードキドキしてるだろ?
待ち合わせ場所でお前見つけてから、ずっとこんな状態。
全然落ち着かないし、興奮しっぱなし…。
そりゃ、目に見えて浮かれてたらカッコ
これでもすっげー抑えてる。
けど、気持ちがふわふわしたままだったから、お前の
「こうならないように、気をつけなきゃ…」って思ってたのに…。
痛い思い我慢させて、ほんとにごめんな…。
(触れるだけのリップ音)
(花火が上がる音)※ 以下、最後まで入れてください。
花火、始まったな。
いいよ。
今年はもう帰ろう。
ほんとにいいんだって。
お前にこれ以上痛い思いさせたくねーもん。
花火が見れないよりお前が痛い思いする方がヤダ。
とりあえず、タクシー拾えるとこまでは歩かなきゃだから、
その方が周りを気にする必要ねーし、歩きやすいだろ?
立てる?
歩いてて、痛かったら言えよ?
我慢は禁止。
いいな?
(2人ゆっくり歩き出す)
(耳元で)今年はダメだったけど、来年も、