(店の中に声を掛けるように)お疲れ様でした。
お先に失礼します。
(店の裏手で彼女が待っている)
あれ?
どうしたんすか?
いつもの待ち合わせ場所で何かありました?
(彼女:「うぅん。君のこと、待ってた」)
『俺のこと待ってた』?
(溜息)はぁ…。
(少し怒って)俺のこと待ってるなら、店の中にいてくださいよ。
危ないじゃないっすか。
(彼女:「…怒んないでよ」)
怒るのは、当たり前っす。
店の
もしものことがあったら、どうするんすか?
……俺、イヤっすからね?
俺の知らないとこで、お姉さんが襲われるとか…。
(彼女:「でも、お店にいたら逆に片付けの邪魔になんない?」)
お姉さんが店にいて、邪魔なわけないじゃないっすか。
できることなら、ずっとそばにいてほしいくらいなんすよ?
(彼女:「…ごめん」)
謝るなら、約束してください。
今度から待ち合わせ場所以外で俺のこと待つなら、店の中で待つって。
そしたら、許してあげます。
(彼女:「…うん。約束する」)
ほんとっすよ?
約束しましたからね?
(彼女:「うん」)
じゃぁ、帰りましょうか。
(彼女:「いつもごめんね。遠回りさせて…」)
ちょっと遠回りするくらい、いいんすよ。
気にしないでください。
夜遅くに女性を1人で帰すなんてことできないっすから。
(無言のまましばらく歩く2人)
…そういや、なんで今日は待ち合わせ場所じゃなくて、店の
俺を待つだけなら、待ち合わせ場所でもいいっすよね?
(彼女:「なんとなく、かな…」)
『なんとなく』?
そんな理由だったら、待ち合わせ場所で待っててくださいよ。
(彼女:黙ったまま難しい顔をしている)
(彼女の様子を察して)ほんとは『なんとなく』なんて微妙な理由じゃなくて、ちゃんとした理由があるんじゃないんすか?
(彼女:「なんでそう思ったの?」)
『なんで?』って言われても、お姉さんの雰囲気とか声のトーンとかが
(彼女:「…大事な話があるの」)
大事な話…?
あっ!
分かった!
ストーカーの件で何かあったんじゃないっすか?
そうでしょ?
(彼女:「うぅん。違う」)
…違うんすか…。
んー、じゃぁ何だろう?
全然想像つかないや…。
ちなみに、それって、いい話?
それとも、悪い話?
(彼女:「いい話だよ」)
『いい話』?
ん゛ん゛……ダメだ…さっぱり分かんない…。
なんすか?
いい話って。
(彼女:「これからも、君と一緒にいたいなって思ってて…」)
うん。
俺もお姉さんと一緒にいたいって思ってますよ。
(彼女:「そうじゃなくて!」)
ん?
そうじゃないってどういうこと?
俺、なんか勘違いしてます?
(彼女:「だから…その……君のことが好き、です…」)
(間抜けな声で)へっ…?
好き…?俺のこと…?
嘘?
マジ?
ヤバい…。
どうしよう…。
いい話すぎて、正直信じらんない…。
(彼女:「そこは信じてよ!!」)
だって、俺のこと好きって感じ、全然なかったじゃないっすか。
(彼女:「年上で好き好きオーラ出してたらダサいじゃん?だから、大人の余裕出してたの」)
そんなとこで、大人の余裕とかいらないんすよ。
『好き!』ってオーラ、もっと出しまくってガツガツきてほしかったっす。
…でも、ありがと。
お姉さん。
俺のこと、好きになってくれて。
すっごい嬉しいっす。
あの……いきなりなんすけど、ワガママ言ってもいいっすか?
…お姉さんの家に帰るの、ちょっとだけ遠回りしたいんすけど…。
(彼女:「デートしたいんでしょ?」)
な、なんで分かったんすか?
デートしたいって…。
(彼女:「顔に書いてるよ」)
『顔に書いてる』?
えぇー…。
マジっすか?
(彼女:「うん。お店とは全然違う」)
普段表に出さない分、お姉さんの前だと出やすいのかもしれないっす。
彼女の特権っすね。
ふふ。
お姉さん、顔真っ赤。
(彼女:「揶揄わないでよ」)
ほんとのことっすから。
ってか、さっきまでの大人の余裕、なくなってますよ。
今のお姉さん、超かわいい。
(彼女:「嫌いになった?」)
こんなことで嫌いになるわけないじゃないっすか。
むしろ、さっきよりも好きになってる。
今まで知らなかった一面が見れて、どんどん好きになってくのが止まんないっす。
俺の全てを
……大好きっす。