(彼女が起きてくる)
おはよ。
どうしたの?
喉でも渇いた?
(彼女:「なんで?」)
いつも起きる時間よりずいぶん早いから…。
もう少し寝てきたら?
(彼女:「うぅん。やらなきゃいけないことあるから起きる…」)
そっか。
やらなきゃいけないことがあるなら仕方ないか…。
(彼女:「君の方こそ、何してるの?」)
ん?俺?
俺はこれから食事にしようと思ってたんだけど…ちょっと悩んでて…。
(彼女:「何に悩んでるの?」)
くだらないことだから、気にしないで。
(彼女:「いいから、話して」)
(観念したような溜息)はぁ…。
話してもいいけど、ほんとにくだらないことだよ?
それでもいい?
(彼女:「うん」)
(気まずそうに)……今日は、何型の血にしようかなって悩んでた…。
(独り言っぽく)昨日はB型だったから、今日は
……いや、O型でもいい気がするし…。
でも、AB型のクセのある感じも捨てがたい…。
あ゛ぁ゛ーっ!!
…ダメだ…決めらんない…。
君は何型がいいと思う?
(彼女:「どれでもいいんじゃない?」)
そうだよね。
どれでもいいよね。
(彼女:「血の味って血液型で違うの?」)
味の違い?
そりゃあるよ。
型が違えば、全然違うよ。
食べてる物とか、生活習慣とかで多少の違いはあるけどね。
A型はクセ少なめで、あっさりした感じ。
だからか、仲間内でも結構人気。
でも、ずっと吸ってられるかって言われたら、俺は無理。
すぐ飽きちゃうから。
O型もクセが少なめなんだけど、ねっとりした感じ。
口の中にまとわりつくから、俺はあんまり好きじゃない。
こってりしたのを吸いたい時には持ってこい。
B型は、ちょっとクセがあるけど、まろやかな感じ。
クリーミーっぽいって言った方が近いかも。
O型ほどじゃないけど、口の中に残る感じがある。
AB型は、さっきも言ったけど他の血液型に比べて1番クセがあって、仲間内でも好き嫌いがはっきり分かれてる。
好きなヤツはAB型ばっか吸ってるけど、嫌いなヤツは匂いだけで「もうダメ!」って言うくらいにね。
(彼女:「匂いでも何型か分かるんだ…」)
匂いは、型によって……というより、個人によって違うかな。
とはいえ、俺はそこまで鼻がきく方じゃないから、
(彼女:「そうなの?」)
男より女の子の方が美味しそうな匂いがするから。
女の子の匂いは、甘くて、嗅いだ瞬間から頭がクラクラしちゃうくらいの魅惑的な匂い。
だから、怪我しないように気を付けてね。
(彼女:「子供じゃないから、怪我なんかしないよ」)
もしものことがあるかもしれないから言ってるの。
俺以外のヤツに君の血を吸われたなんてことになったら、絶対冷静じゃいられないもん。
君の血を吸ったヤツはいろんな意味で消す。
影も形も残らないように。
(彼女:「そこまでするの?」)
当たり前じゃん。
君の血はそこら辺にいる人間たちとは格が違うんだから。
吸い寄せられるような甘い蜜の匂いで…。
味は甘くてみずみずしくて……今まで吸ってきた中で最上級。
君の血の匂いと味を知ったら、そこら辺の人間の血じゃ満足なんかできない。
100人だろうが、1000人だろうが、好きなだけ吸っていいって言われても物足りない。
それくらい価値のある血なんだよ。
(お腹が鳴る)
あっ…えへへ……お腹、鳴っちゃった…。
いろいろと、もう限界かも…。
(※ 以下、欲望に忠実な感じで)
ねぇ。
君の血、吸ってもいい?
(彼女:「冷蔵庫の血を選んでたんじゃないの?」)
だって、目の前に極上の血があるんだよ?
君以外の血で悩む暇があるなら、1秒でも早く君の血を味わいたい…。
ごめんね。
欲望に
…いただきます。