(お姉さんが急いだ様子で来店する)
いらっしゃいませ。
どうしたんすか?
息切らせて…。
まだラストオーダーまで時間あるから、ゆっくりでもよかったのに…。
(冗談っぽく)もしかして、俺に早く会いたくて…とか?
(彼女:「跡、つけられてる…」)
『
相手の特徴とか分かります?
(数回相槌を打つ)
あぁ……いますよ。
そいつ。
あっ!
後ろ振り返らないで。
俺に話したことバレちゃうから。
そのまま俺に注文してる
相手、顔見知りっすか?
(彼女:「うん。この間告白されて、お断りしたの」)
えぇー…。
告られてフラれたのにもかかわらずストーカーとか、ダサいにも程があんだろ…。
フった時、ちゃんと断りました?
『あなたとは付き合えません』って。
(彼女:「うぅん。『まだよく分かんない』って返したけど…?」)
あちゃー…。
それ、解釈次第では脈ありって取られちゃいますよ。
断るならはっきり断らないと…。
まぁ…ストーカーなんてバカなことしてるヤツは、はっきり断ったところで関係ないのかもだけど…。
とりあえず、避難っすね。
バッグ持ってるってことは、これから家に帰るつもりだったんすよね?
(彼女:「うん」)
ダメっすよ。
家に帰っちゃ…。
1人でいるのは、危ないっす。
友達とかに連絡取ってみました?
(彼女:「うぅん。まだ…」)
じゃぁ、連絡してみましょ?
泊まらせてくれる人がいるかもしれないし…。
(彼女:「でも、迷惑かけちゃうかも…」)
迷惑かけたら謝ればいいじゃないっすか。
誰かに迷惑かけるより1人でいる方が怖くないんすか?
いつ襲われるか分かんないんすよ?
(彼女:「……うん」)
連絡ついたら、俺が送っていきますから。
ね?
(彼女:「…分かった」)
(彼女:スマホで連絡を取っている)
(彼女:「…誰も泊めてくれる人いなかったら、やっぱホテルかな…?」)
誰もいなかったら、ホテルしかないっすね…。
(彼女:落ち込む様子を見せる)
(励ますように)大丈夫っすよ!
まだ誰も泊めてくれないって決まったわけじゃないんすから。
希望を持ちましょ!
(彼女のスマホの通知音が鳴る)
どうでした?
(彼女:「ダメだった…」)
そうっすか…。
(彼女:「どうしよう…」)
そんなに落ち込まないでください。
1つだけ
……お姉さんがいいなら…だけど…。
(彼女:「…どこ?」)
……俺の家っす。
ここんとこ忙しくて掃除できてないから汚いっすけど、それでもいいなら俺の家来ますか?
(彼女:「迷惑じゃない?」)
全然迷惑じゃないっす。
こんな時だからこそ、頼ってほしいっす。
どうっすか?
(彼女:「じゃぁ……お願い」)
了解っす。
じゃぁ、スマホ出して、電子決算してるフリしてください。
(女子の同僚に)なぁ、コレ作ってくんね?
で、出来上がったら、この人に渡して。
あっ!
あと、あそこの影からこっち見てるヤツ、注意しといて。
(同僚:「何、何?彼女さん?」)
うっせー!
お前には関係ねーよ。
(同僚:「はいはーい」)
(彼女:「お金、ちゃんと出すよ」)
(お姉さんに)いいんすよ。
俺の
(諭すように)さっき電子決算してるフリの時、お姉さんの指先がちょっとだけ当たったんすけど、すっげー冷たかったっすもん。
ここに来るまで相当怖かったってことだし、ここに着いてもまだ怖いんじゃないっすか?
ここにいる間は安全だから。
甘くてあったかい物飲んで、気持ち落ち着かせてください。
(彼女:同僚の女の子を見ている)
ん?
アイツのこと気になります?
アイツは、同じ学校ってだけで、全然仲良くなんかないっすよ。
口を開けば、さっきみたいな憎まれ口ばっかで…。
心配しなくても、お姉さん一筋っすから。
ただ、こういう時って同性の方がいいだろうし、アイツのことは信用してるからお姉さんを一時的ではあるけど
なんかあったら、アイツに言ってください。
じゃぁ、ちょっとだけ離れますけど、すぐ戻るんで、ここにいてくださいね。
(彼女:「どこ行くの?」)
店長に早退させてもらえるように話してきます。
(彼女:「なんで…?終わるまで待ってるよ?」)
こんな非常時にバイトなんかしてらんないっす。
バイトは、もうおしまい。
お姉さんがなんと言おうと早退します。
(彼女:「…ごめんね」)
そこんとこは、「ごめん」じゃなくて「ありがと」っすよ?
(彼女:「うん…ありがと」)
不安かもしれないけど、なるべく早く戻ってくるんで、ドリンク飲みながら、ちょっとだけ待っててくださいね。